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決勝戦前夜①

 神奈川県の予選は、第四高校がエース・松田(まつだ)智裕(トモヒロ)が2番手でも2回戦、3回戦、4回戦、準々決勝、準決勝を快勝する番狂わせが起こっていた。 森監督の構想した、桑原・松田・香山・田山の投手リレーが見事ハマったのであった。  そして決勝のカードは、第四高校と聖斎(せいさい)学園高校の対決となった。監督や関係者から明言された先発投手は予想通りだった。 「明日の決勝……聖斎は赤松(あかまつ)直能(ナオタカ)四高(ウチ)は松田、ねぇ。」 「やっぱり地元だから盛り上がってますよ。区役所のロビーでパブリックビューイングあるんで、母と弟もメガホン買ってましたよ。」 「へー……学校じゃシケメンでヘタレのあいつが一気に地元のヒーローか。人生どうなるかわからんな。」 「いや、先生も担任として応援したらどうですか?本当に明日球場行かないんですか?」 「だってドームじゃねーんだもん。」 「ドームで高校野球なんて聞いたことないですよ。」  学校が夏休みに入っていたので、一起(カズキ)裕紀(ヒロキ)に呼ばれて裕紀の自宅にいた。そして何故か裕紀の部屋の掃除や片付けをしている。  家主である裕紀は地元の新聞を読みながらローソファーでダラダラとしていた。

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