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決勝戦前夜⑤
しばらくするとスマホから着信音がしたので、力なく手に取り画面を見ると「拓海さん」と表示されていた。
智裕はすぐにベッドから飛び起きて素早く通話ボタンをタップする。
「も、もしもし…!」
『智裕くん、今電話して平気だった?』
「うん!全然平気!むしろ嬉しい!」
『そう、良かった……。』
(あー、安心した時の拓海さんの吐息ってエロいし癒されるぅ…。)
智裕はすっかり腑抜けて鼻の下も伸びきっている。
『あ、あの……明日、頑張ってね。』
「あー…うん。なんか向こうの赤松の兄ちゃん凄そうだし緊張半端ないけど、やれるだけのことやるよ。」
『そ、それでね…明日、夕方に校門前で報告会…だよね?』
「うん。確かそうだった気がする。監督には結果によっては俺個人の会見もあるって言われてる。」
『……あ、明日ね……まーちゃん、智裕くんのお母さん達に…仕事でって…嘘ついて……お泊まりで預かって貰うことになってるんだ…。』
「へ?」
『智裕くんと…2人きりで……一緒にいたい……から……。』
その言葉だけで智裕は大興奮した。
「明日ちょー頑張るからね!マジで!拓海さんのために頑張るからね!」
『ふふふ…そこはチームのため、でしょ?』
「うーん……まぁ、それもあるけど…盛り上がってたんだからさー。」
ブーと不貞腐れると電話口から拓海の綺麗な笑い声が聞こえて、智裕は表情が緩んだ。
「絶対勝ってご褒美倍にしてもらうから、ね。」
『ふふ……俺も応援頑張るね。本当は会いたいけど…明日早いでしょ?もう休んで。』
「うん、電話ありがとうね。拓海さん……愛してるよ。」
『……っ!お、俺も……大好きだよ……智裕くん。』
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