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マネージャーの亀裂①
神奈川県大会を制覇した翌々日、野球部は甲子園を見据えて再び厳しい練習を再開した。
ベンチ入りの選手は勿論、それ以外の下級生も3年生の引退が遠くないこともあり一層ふるいにかけられるように練習が厳しくなる。
同時に激務になるのがサポート役のマネージャーたちであった。
「よーし!内野ノックあと10本だ!」
「しゃーすっ!」
森監督は容赦なくノックをする。選手たちは死に物狂いで追いかける。
「坂口 先輩、ドリンクの用意出来てますか?」
「……まだだけど。」
投球練習の捕手役から戻ってきた野村 がグラウンドの横の陰にいるだけの3年マネージャーの坂口に訊 ねると、坂口は不貞腐れたように堂々と答えた。
「あの、スケジュールのプリント見てますか?その時間に合わせて貰わないと選手たちが適当な休憩が取れなくなるんですよ。」
「だって1人だと多いし。」
「はぁ……わかりました。超特急でやりましょう。」
野村は足につけたプロテクターを外さないまま、急いで選手のドリンク作りをした。
「ねぇ、普通に水だけでよくない?」
「ダメですよ。この時期はちゃんと塩分も補給しないと大変なことになりますから。」
野村は柔らかく困ったように笑って坂口に説明した。しかし坂口は面倒臭そうな顔をして、テキトーに手を動かした。
(何なのよあの眼鏡…エラそーにさ。松田 のお友達だっけ?はぁ……。)
「ほんと、ウザ。」
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