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いざ、馬橋学院へ①

 馬橋学院のバスに乗り込んだ四高野球部たち。  八良は中川によって捕獲され、智裕は八良から(のが)れることが出来た。  バスでは智裕の隣の席に直倫が座った。 「やっぱり松田先輩って凄いですね。2人とも去年のU-18メンバーじゃないですか。」 「おー……お前は純粋だなぁ。八良先輩、筋力やべーから抵抗するだけで5イニングくらいの体力消耗した…。」  キラキラと目を輝かせている直倫に対し、智裕は既にグッタリしていた。  全員乗車したことを確認すると、バスは馬橋学院に向けて動き出した。 「大阪、去年遠征した以来です。」 「俺も久しぶりかもなー。高校入ってからは初めてだし。」 「何日も裕也さんと離れるの初めてなので寂しいです。」 「………なぁ、赤松。」 「何ですか?」 「お前、決勝戦の後さ……そのー……あいつに何した?」  智裕は気まずそうにある日を思い出しながら恐る恐る直倫に(たず)ねた。 「どうしてですか?」 「いや、俺が次の日の朝コンビニ行ったら大竹がコンビニの前のベンチで死にかけてたから栄養剤を(おご)ってやったんだけど……。」 「………ああ、裕也さん気絶しましたよ。」 「きぃ⁉︎おい、マジか…!」 「俺も初めての経験だったので加減がわかりませんでした。」  爽やかにニコっと笑いながら悪びれずにそう言う直倫に智裕は恐怖を覚えた。 「それより先輩はどうだったんですか?恋人からのご褒美は。」 「え、聞いちゃう?それ、聞いちゃう?」  話を振られると智裕はニヤニヤと鼻の下が伸びきる。 「言いたいけどなぁ、まだお子ちゃまな赤松くんにはちょーっとオトナな世界かもしれないなぁ。どーしよーかなぁ。」  何故か直倫をチラチラ見て勿体ぶる。そうやって調子に乗るとロクなことが起こらない。  直倫は窓側にいる智裕を窓ドンして追い詰める。 「先輩……俺たち同じ部屋ですよね。」 「お、おお……。」 「どっちがお子ちゃまか、比べましょうか?」 「ゴメンナサイ……俺の方がお子ちゃまです。」  そんな2人の姿を、通路を挟んだ隣の席に座っていた野村が驚きながらもスマホに撮り保存した。  そして2年5組のグループ通信にその爆弾を投下した。

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