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華麗なるアカマツ家④

 バスに乗り込んでも、智裕は浮かれていた。 「うへへー、直能さんカッケーなぁ…キラキラしてたぜぇ…。」 「そうですか?」 「お母様も美人だし、お父様も絵に描いたような紳士だし…素晴らしきDNAだなぁ。」 「俺もそのDNAがあるんですけどね。」  直倫はため息をついて呆れ顔になっていた。  すると後ろの席から桑原が顔を出して直倫に声を掛ける。 「おい赤松!お前まさか妹とかねーちゃんとか居ないよな⁉︎」 「いませんよ。イトコは女性ばかりですけど。」 「なにー!しょ、紹介しろ!俺たちに美人を恵めや!」 「ダメですよ。みんなちゃんとしたお嬢様ですから。」 「お嬢様!だ、と……。」 「桑原、諦めろ。赤松家は本来、俺らとは無縁のセレブ一族なんだから。」  隣に座る3年の当麻(とうま)が桑原の肩を叩いて諌めた。 「つーか本当に何で四高(うち)に来たんだよ。俺らとしては有難いけどな。」 「あ、それさっき赤松の親父さんから聞いたけどさ。赤松って俺に憧れてんの?」  智裕がストレートに問いかけると、赤松より先に桑原と当麻が反応した。  そして腹を抱えて笑い出した。 「あはははははは!ま、松田に、憧れとか!な、ないないないない!」 「確かに、わ、わかるけど…実際会うと幻滅するっしょ!ヘタレだし馬鹿だしヘタレだし!あはははははは!」 「ちょっと笑いすぎですよ!」  その爆笑の連鎖は車内に広まった。しかし堀が一喝して収束した。  直倫は顔色を変えずに、またため息をついてどこか一点を見つめていた。 (俺の……憧れ……将来……大切な、人……か……。)

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