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激闘の日【1回攻守交代】②
「なぁなぁ、とーちゃん。にーちゃんってプロ野球選手になんのか?」
テレビの解説を聞きながら智之 は父に訊ねた。父は缶ビールを飲みながら「んー。」と考える。
「にーちゃんって確かに野球つぇーけど、華がねぇよな。」
「そうだなー、確かにアイツには華がねぇからなぁ。」
「なー。」
智之の膝に座る茉莉はメガホンをかじりながら同調するような声をあげる。すると父と母は笑い出した。
「茉莉ちゃんにも華がねぇって言われてやんのー!」
「赤ちゃんは嘘つかないからねぇ…ブフッ、我が息子ながら可哀想……ふふふ。」
「エースには普段から華がねぇと、なぁ、石蕗さん!」
松田父に同意を求められて拓海は、「へ?」と間抜けな返事をしたあとに「そ、そうですね、ははは。」と笑った。
しかし心の中では真っ赤な顔をして否定する自分が叫んでいた。
(そんなことないのに!智裕くんはめちゃくちゃカッコいいもん!今だってキャッチボールしてる後ろ姿がすごく大きくて頼もしくて……でも……。)
拓海はテレビに映る智裕の表情を少しだけ怖いと感じた。
先日の対聖斎学園の時とは全く違う表情だった。殺気を放ち、どす黒いオーラが今にも見えるのではないかというような。
(昨日の電話では優しく笑っていたのにな……大丈夫、かな?)
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