508 / 1000
激闘の日【2回表】⑤
マウンドには馬橋のキャッチャーと内野手が集まっていた。
「あーやばい。俺の後ろから鬼が徐々に来とるて…。」
「あかん…ベンチ帰ったら命失くなるって……。」
セカンドの沼尻とショートの佐々の二遊間コンビの顔は青くなっていた。サードの中川もチラリと外野の方を見て気まずそうな顔をする。
「沼ちゃん、さっちゃん…死んでも内野ゴロに仕留めなあかんで。」
「中川先輩、悪送球だけはやめてくださいよ。もう俺ちびりそうや…。」
ファーストの渡井は脚が震え始めていた。さすがの畠もキャッチャーマスクの下で唇を震わせていた。
「バックホームシフトにしますけど、み、みなさん、センターは気にせずに守ってくださいよ。」
「おう。」
「すまんな…俺が手ぇ滑らせてもうて。」
八良は本当に申し訳なさそうに俯 いて謝る。しかしその姿に他のメンバーは顔を青くした。
「謝んなボケが!」
「そうですよ!ハチローさんが謝るとか明日雪降りますから!やめてください!」
「なんやねん、いっつも謝れ言うとるやないか。」
「やかましい!ハチローさんはもう集中しといて。じゃあ、頼んます!」
「っしゃあ!」
「任せろ!」
「センター気にせず!」
「1点もやらへんぞ!」
全員を鼓舞し合い、守備に戻る。そして畠はバッターボックスの前で両手を大きく広げて8人にバックホームシフトと伝えた。
(あー……ハチローさんのずーっと後ろが禍々しいな……絶対絶対絶対に堀にホームベース踏ませへんぞぉ…。)
畠と八良は18m離れた場所で一緒に呼吸を合わせる。
ピリピリした中で6番打者の当麻がバッターボックスに入った。
ともだちにシェアしよう!