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激闘の日【7回表】①
「堀先輩。」
ネクストバッターサークルから出ようとする堀を呼び止めたのは清田だった。
「この回、必ず…ホームベースを踏んで下さい。1点ビハインド、ひっくり返しましょう。」
清田の眼を堀はしっかり見て、力強く頷いた。
そしてバッターボックスに向かいながら清田に返事をする。
「当たり前だ。全力で松田を援護するぞ。」
(清田は気付いている……松田が今、勝手に孤独になっていることを。どれだけ言葉を並べてもアイツはもう信じてくれない。なら、打って打って打ちまくることでしか、松田の手を取ることはできない!)
堀の打席、その時野村はネクストバッターサークルにいる清田に近づいた。
「清田くん……。」
「何?」
「お願いだから、無茶だけはやめてくれよ。松田くんには、清田くんしかいないんだから……。」
「……大丈夫だよ、言われなくても俺は泥んこまみれになるのはゴメンだからな。」
言葉は冷静だった。しかしその清田の眼には静かな炎と殺気が生まれていた。
脳をフル回転して、眼を凝らし、清田は次期エースの金谷を分析する。
(カーブ、スラーブ、スライダー……そして140km/h近く出るストレート……だが、松田八良より球の回転数がある。体感ではプラス3キロほどだと考えていい。金谷も技巧派、ウチの松田と同じタイプの右腕、だがオーバースロー……腕は硬い、動きはウチの松田の方がまだ何が来るかわからない、俺は意地でも2ベース以上の安打を叩き出してやる!堀先輩をホームに帰して全力で走ってやる!)
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