550 / 1000

激闘の日【7回表】③

「なんやあの4番、猛打賞やないか。」 「へー、あれが公立の学校か、信じられへんなー。」 「ハチローには劣るけど、あの金谷も高校ではかなりハイレベルな投手だぞ…。」 「今年のドラフトは中川とハチロー、来年は金谷と神奈川の松田が目玉だって言われるくらいだからなぁ。」  ダークホースの出現に、すっかり馬橋勝利の雰囲気だった観客席が四高に傾き始めた。 「ビールいかがですかー?」  ビールサーバーを背負った売り子さんがコップを掲げながら声をかけていく。  堀の2ベースヒットで盛り上がった観客はテンションがあがって750円のビールをどんどん買っていく。 「すいませーん、ビール下さい!」 「おおきにー。」  しばらくミネラルウォーターで大人しくしていた裕紀は何イニングか振りにアルコールを摂取する。 「また飲むんですか?」 「け・い・ご。」 「………はぁ…。」 「なーに照れてんの?」 「うるさい酔っ払い。」  完全にタチの悪い酔っ払いに絡まれた一起は呆れたように目を逸らした。  裕紀は少し笑ってビールを飲むと、グラウンドに目を向けた。 「7回はラッキーセブンって言うけどさ……どうなるんだろうなー。」 「…ここから逆転、とか?」 「その逆も然り。」 「え………。」  清田! パパパンッ!   清田! パパパンッ! (その逆って……。)

ともだちにシェアしよう!