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激闘の日【エース崩壊】②
いけいけ!畠! いけいけ!畠!
打て打て!畠! 打て打て!畠!
同点、ここは絶対に塁に出る、そんな意気が18m先の智裕を僅かに怯えさせた。
(松田ぁ……落ち着け……落ち着いて、俺を見ろ!お前が、この生意気なキャッチャーを抑えろ!)
マウンド上で、勝手に孤独になっている智裕へ、今中はそう呼びかけるようにサインを送る。左手のミットを右の胸にトントンと叩いて、伝えようとする。
だけど、伝わらない。
スプリットを要求した。振らせるために。だが、低めのストレート。畠は合わせた。
打球は左中間へ真っ直ぐに。
(ダメだ!せめて単打で!)
今中が立ち上がる、畠は走り出す、智裕は球を捕ろうとしたがすり抜ける、ああ、もう、ダメだ。
パァンッ
鋭い、皮のぶつかる音。
打球の重さに、捕った直倫 は顔をしかめたがすぐに1塁へ送球し、畠はアウトとなる。
「あ、か……まつ………。」
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