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戦友たちとの別れ①
朝食を終えて、馬橋の女子寮の玄関の前では女子たちの熱い抱擁が交わされていた。
「うう…寂しいわぁ……もっともっと語りたかったわぁ。」
梨々子 は泣きながら増田との別れを惜しむ。そんな梨々子を外薗 が慰める。
「リリコ、年末はビッグサイト行くんやろ?」
「行く。」
「じゃ、じゃあ一緒に行きましょう!私の親友もいるし!ね!」
「ホンマ⁉︎絶対やで!アクスクのレーン行くんやで!」
(※アクスク=“アクタースクール”という美少年育成ゲーム)
3人は年末の再会を約束して、男子たちと合流するために野球部の寮へ向かおうとした。
「キョーカちゃん!おったー!」
遠くから走ってくる黒髪で馬橋学院の制服を着た女子が外薗を呼び止めた。
走ってきたその女子は「はぁ、はぁ」と息を整えながら外薗のシャツに縋った。
「カナちゃん?何でここにおるん?」
「はぁ……ハッちゃんは…ハッちゃんは大丈夫なん?」
「カナちゃん」と呼ばれたその女子生徒は少し背の高い外薗を見上げる。その目は真っ赤に腫れていたことがわかる。
「ハチローか…今から合流するで。一緒に行く?」
「ホンマ?行く!昨日全然電話もメッセージも繋がらんくてウチ……ウチ…。」
「あーあー、可愛い顔が台無しになるで。」
また震えて泣き出すその子を外薗は優しく指で涙を拭った。
外薗が彼女の手を引いて、改めて4人で男子部員たちとの合流地点へ向かう。
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