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夏休み閑話【夏風邪】⑧

「お腹いっぱい…ご馳走さま。」 「はいよ。これ、風邪薬。2錠だって。」  薬を包装から取り出して拓海の掌に乗せてあげ、スポーツドリンクのペットボトルを手渡した。  拓海はコクリと飲み込むと、「ふぅ」と息を吐いた。 「ありがと、智裕くん。」 「いいよ、ほら、もう横になって。あ、冷えピタあるからおデコに貼ろうな。」  智裕はそばに置いてたタオルで拓海の汗をふき取ると、前髪をあげる。 「おデコ全開の拓海さんって新鮮で可愛いなぁ。」 「うぅ……俺、あんまり好きじゃないんだけど…。」  額の汗も拭き取ったら、そこに冷却シートをペタリと貼り付けた。 「きもちー……。」 「良かった。」 「あ……智裕くんのご飯、は?」 「ああ…俺は別にいいよ。」  拓海に食べさせることに夢中になって智裕は夕飯の弁当を食いはぐれていた。  しかし拓海の笑顔で満たされた智裕は空腹が気にならなくなっていた。 「た、食べないと…体重……。」 「今日くらい大丈夫だって。ちょっと食器片付けてくるから、ちゃんと寝ててね。」 「………いいよ、明日俺がやるから…。」  拓海は自分の髪を撫でていた智裕の手を握った。 「そばに……いて欲しい……。」  泣きそうな声で強請る。 (どうしよう…わがままだったかな?)  少しだけ不安になっていると、智裕は優しく微笑んで拓海の手を握り返した。そして顔を拓海の耳元に近づける。 「いいよ。一緒に眠ろう。」  智裕は拓海の左側に寝っ転がった。  そして拓海の方に体を向けると、マメだらけの左手で拓海の輪郭を撫でる。 「ともひろ、くん……。」  拓海は智裕の方を向いて、まどろむ表情をしながら。 「だいすき……。」  そう呟くと、可愛らしい寝息をたてて、眠り落ちた。 「俺も大好きだよ……早く良くなれよ、拓海さん。」  拓海の寝顔を見たら、智裕まで眠くなり一度ベッドから出て家の中の照明を落としていき、再び拓海の隣に寝転がって拓海を見つめながら眠る。 「おやすみ、拓海さん。」

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