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夏休み閑話【入れ替わってる?】(13)

 翌朝、宮西家は大黒柱の宮西母がほろ酔い状態で帰宅した。 「ただいまー……あーしんど。」 「お帰りなさい、母さん。」 「椋丞かー、ただい………椋丞⁉︎」 「はい、何でしょう?」  母は一気に酔いが醒めた。  キッチンに立っているのは間違いなく自分の息子なのだが、雰囲気が全く違う。  それに息子から近年「母さん」などと呼ばれたことはない。 「あれ?私、夢みてるの?いつもの椋丞なら『酒くせーぞババア』って冷たい目で見るんだけども。」 「お仕事お疲れ様です。朝ごはん準備出来てますよ。」 「椋丞が、私に、お疲れ様、って……ええぇぇぇぇぇぇ⁉︎」  母は絶叫して息子の顔をペタペタと触る。 「熱はないみたいね……。」 「大丈夫ですよ……あの、ご飯の前にお風呂にしますか?今から準備しますけど。」 「ああぁぁ……椋丞…あんた……やっと、お母さんの有り難みがわかったのね……はぁ……もう、嬉しくて、嬉しくて……。」  母の目には一筋の涙が伝う。愛しい我が子をその手で抱きしめると、息子は応えてくれた。 「大袈裟ですよ母さん。さ、お風呂に入ってご飯を食べたらお休みになって下さい。」 「椋丞……ありがとう。」  結果、宮西家には感動的なシーンが生まれた。

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