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新体制で始動③

 一方、野手チームは清田の檄が飛びながら森監督もバッティング練習を厳しく見守っていた。 「赤松。」 「はい。」 「次の練習試合からお前は3番だ。」 「は…はい!」 「これがどう言う意味かわかるよな?」  森監督の突然の指名に直倫は戸惑った。  今までは1番でゴロだろうが自分が出塁すれば良かった。だがクリーンアップになるということは違う。 「長打力、ですよね。」 「そうだ。お前の打ち方は確実だが一発を見込めない。それは分かっているだろう。」 「はい。」 「今月中にフォームの見直しをする。俺も見てやるが自分なりに考えろ、いいな。」 「はい!」  そのやり取りを聞いていた野村は、すぐにポケットに入れていたメモに記入した。 「克樹くん、何してるの?」  丁度、ドリンクの用意を終えて野村の隣に来た増田は不思議そうにメモを覗き込んだ。  そこにはビッシリと文字が書かれていた。 「清田くんは部をまとめて士気を乱さないことに必死だし、投手は香山くんと松田くんがいるからどうにかなるけど……野手の細かいデータはこうして俺がフォローしないと、ね。」 「そっかぁ…2年生、私を入れても6人しかいないもんね。それに松田くんはそれどころじゃないだろうし。」 「投手も…秋季大会直前まで松田くんは使えないから先発投手を立てることが急務だけど、まずは部員を知らなければって感じだね。俺たち3年生がいてくれたからのんびりし過ぎてたな。」 「堀先輩たちって、本当にすごかったんだね。」  3年生がいなくなった空虚を埋めることに、2年生は焦りを感じていた。 「1年生の捕手は三輪(みわ)くんだけ……か…もう1人くらいいて欲しいところだけど……。」 (本当にそうなった時に、俺はもう一度ユニフォームに腕を通せるかな?) 「なーんてね。」 「ん?どしたの克樹くん?」 「何でもないよ、さ、そろそろ野手チームが休憩だから準備しよう。」

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