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新体制で始動②

 ランニングを終えると智裕は直倫に教わったプロテインスポーツドリンクで水分補給をした。 「うぅ……まっじぃ…。」  数日経っても慣れない味に顔をしかめていると、そばにいた投手チームの1年が「それ何ですか?」などと(たず)ねてきた。 「弥栄、お前飲んでみろよ。」 「何で俺なんですか!」 「視界に入ったから。」 「松田先輩酷すぎます!」  先輩命令に逆らえない弥栄は一口だけ智裕の水分を口に含んだ。  やはり智裕同様にしかめた顔をする。 「絶妙なマズさっすね……何でこんなもん飲んでるんスか?」 「あと8キロ増やさねーとダメなんだよ…ははは。これでも10日間で3キロ近くは増やしたんだぜ?」 「はいはい、愚痴をこぼす暇があったらどんどん筋肉に摂取させるよ松田くん。」 「うぅ……。」  野村は智裕の腕に付いているヘルスメーターを確認し、ショートブレッドを手渡した。智裕はプロテインドリンクと共にそれを胃に流し込んだ。 「日本代表って大変っすね。俺の弟トライアウト落ちたんスけど、受かったら受かったで過酷っすね。」 「え?弥栄、弟いんの?つーか日本代表?U-15?」 「いえ、双子なんでU-18っす!弟の高校は福岡の隈筑中央っす!」 「く……ま……!」 「弟、仁紀(ヒトキ)っていうんですよー。俺と1文字違いでややこしいっすよねー。」  智裕と香田は続々と出てくる1年の新情報の量で、チームを作り上げるのに足りないものが見え始めていた。 「投手チームは今日はキャッチボールやめ!全員円になって座れ!あ、松田は話聞こえるところで筋トレな。」 「お、おう!」

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