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オオタケくんたちの憂鬱④
午後9時過ぎ、裕也は自室でダラダラとテレビを観ていた。
すると手元に置いてたスマホが鳴る。画面を見ると直倫からの着信。
裕也は夕方のことなどすっかり忘れてテレビを観ながら通話を始めた。
「よぉ、直倫。」
『あの…裕也さん……メッセージのことなんですけど。』
「あ?俺なんか送った?」
『その……テレフォンセックスしてくれるんですか?』
裕也は一口飲んだミネラルウォーターを吹き出した。そして夕方の宮西の愚行を思い出し怒りが湧く。
「ンなわけねーだろバカ!あれは椋丞が勝手に送ったんだ!」
『そうですよね…いや、ちょっと期待してたんですけど、裕也さん、あんなにハートマーク使わないし。』
「一生期待すんなよ。」
『俺は電話を通してじゃなくて、ちゃんと肌を重ねたいです。』
「直倫!」
直倫の裕也への肉欲は計り知れない。裕也は律するように直倫を叱る。
「ったく……あ、そうだ。俺さ、クラスの文化祭実行委員やることになっちまってさ。それで明日会議とかなんとか…俺も忙しくなりそうだし、しばらく遊びに行ったり出来ねーかもな。」
『文化祭実行委員ですか。あー、そういえば俺のクラスにもいましたね。』
「なんだよ、興味なさそうだな。」
『文化祭って11月の頭ですよね?県の秋季大会と時期が同じなんですよ。』
「あーそうか……え?秋季大会って11月⁉︎」
『いえ、いつもは少し早いんですけど、松田先輩のように国際試合出場の選手が出られるようにと配慮されたんです。』
「なんだそれ。あいつどんだけ優遇されてんの?」
『あの人天才ですからね。あ、でも文化祭前日が決勝なんで当日は参加出来ますよ。』
「へー。でも疲れてやってらんねーだろ。」
『裕也さんが頑張って準備したものは見ないわけにはいきません。もし時間があれば一緒に回りたいです。』
「……お、おう。」
『裕也さん、愛してますよ。』
また裕也は一口飲んでいたミネラルウォーターを吹いた。
そして「馬鹿!」と怒鳴りつけて通話を終了した。
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