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オオタケくん再争奪戦⑨
「ちーちゃん!マジでやめろ!」
2人を引き剥がしたのは先程前まで恐怖で固まっていた智裕だった。
涙目になっている裕也に気がついた智裕はそのまま裕也の顔を自分の胸に押し付けた。
裕也を支える智裕の手も、若干震えていた。
「俺らの初恋はちーちゃんだよ。だけど今はそれぞれ別の人に恋してるんだよ。小さい時に約束したかもしれねーけど、それは昔の思い出として処理出来ねーかな?」
ヘタレな目線で智裕は加治屋を見据える。裕也は智裕の制服でゴシゴシと唇を拭った。
「……やだ。」
「ちーちゃん……もう10年も経ってるだろ?」
「だって、僕はずっと……ずっと……ゆーくんが大好きなんだもん!今更諦めきれないもん!」
加治屋はその場にしゃがみ込んで泣き出してしまった。
裕也を庇う智裕も突然すぎて困惑するが、裕也を制止するように強く引き寄せた。
「……絶対奪ってやる。」
ボソリと恐ろしい声色の呟きが耳に入り、聞こえた男子たちは戦慄した。
ぐすぐす、と一頻り泣き終わると、加治屋は立ち上がる。
顔を上げると、悲しそうな笑顔を浮かべて指で涙を拭う。
「ごめんなさい、お騒がせしました。ゆーくん、ごめんね……でも僕はゆーくんのこと好きだからね。」
天使のような笑顔を振りまいて加治屋は教室を出て行った。
「嵐が去ったな……。」
「会長って悪魔?」
「でも顔は天使だよなぁ…。」
智裕の腕の中で裕也は震えていた。
「大竹……。」
「……な、んだよ……。」
「10年ぶりのモテ期おめでとう。」
裕也は智裕の心臓に拳をぶつけた。
「ぐごぉあ!」
「嬉しくねーよ!バーカバーカ!」
裕也は涙目で悪態をついて、教室を飛び出した。
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