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立ちはだかる壁②

 そしていよいよ出てきた両チームのバッテリー。  観客席の目の前にあるブルペンで投球練習を始めた。3塁側スタンドに座る智裕の目の前には勿論、八良と後藤のバッテリーがいる。その横では中川、大東とチームの主砲が素振りをして身体を慣らしていた。  チラチラと視界に入るのは、昨夜とあった由比壮亮投手コーチ。  恐らく由比にも智裕が見えたのだろう、智裕の方に優しく微笑まれた。 (……あれから、なんか『ごめんね。』って言われただけだし、フツーに家まで送って貰ったし、今朝も普通に挨拶したし、コーチも試合モードだったし…これは、なんだ?新たに与えられた試練なのか?こんなことくらいで揺らぐなって試練?…確かに俺、拓海さんと別れてた時期にすげぇ心が荒れてたし…もうあんなことならないようにしなきゃだし!と、とりあえずこの試合終わって今日帰ったらまず拓海さんの家に行かねぇと!そんでちゃんと拓海さんが好きって言って…言って……。) 「おい、もう試合始まるぞ。」  聞き慣れた声がそばから聞こえた。  智裕は気がついて声のする方を振り向くと、制服を着た普段の相棒が不機嫌そうに(たたず)んでいた。 「清田⁉︎お、お前今日部活は…。」 「早退。香山(こうやま)と野村に任せてる。」 「ああ、そう。」  恭介は無遠慮に智裕の隣に腰を下ろした。

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