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オトウトたちの秘め事①

 明日はいよいよ壮行試合2日目で、松田智裕は先発投手としての技量が試される大切な場。  そんな前日の夜なのに、松田家は大わらわだった。 「智裕!あんた全然準備してないじゃない!」 「だって昨日まで死ぬほど疲れた練習してたんじゃい!」 「あんたは帰宅組でしょ!そんで帰ってきてお風呂入ってご飯食べたあと勉強でもしてたの?毎日毎日裕也くんの家に遅くまで行って何してたの!」  智裕は明日の壮行試合が終わり、2日後には修学旅行、そして3日目の朝に中抜けして夏も過ごした馬橋学院の旧野球部寮に今度は日本代表の強化合宿で1週間、そのまま関西国際空港から成田、シカゴ経由でマイアミへ、3週間以上の遠征だ。  なのに、レンタルしたスーツケースは空っぽ。つまり荷造りを全くしていない。ユニフォームなどは仕方ないにしても酷い状況だ。  しかも修学旅行は私服だというのに、何も決まってない。あまりの準備不足に母の雷がドカンと落ちた。 「おい!智之(トモユキ)手伝え!」  こういう時、弟をこき使うのが智裕の常套手段だ。 「智之なら宮西さんチにお泊りよ。」 「何でだよ!」 「今日は椋丞くんがお母さんのお手伝いで夜遅いから大介くんと一緒にチビちゃんの相手するってよ。」 「宮西のかーちゃん、とうとう智之までパシり出したのかよ。」 「ほら!近所のし●むら、9時まで開いてるから足りないモン買ってきなさい!」  智裕は母に5000円札を握らされて家から手際よく追い出された。

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