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旅の前の日④

「マジで井川が女神だと思ったんだよ。」 「まぁ……井川さんは優しいからね。それに……。」 (きっと松田くんのことが好きだからなんだろうけどね。)  9月半ばからの修学旅行の話し合いなどで智裕と井川が一緒にいるところを度々見てきた野村は、何となく井川が智裕に好意を持っていることに気がついていた。  またそれを当人である智裕は微塵も気付く気配がないことにも少々(いら)立ちを感じている。 「その井川さんって松田先輩のこと好きなんじゃないですか?」  サラッと言うのはTHE 野球以外は空気を読めない男・直倫だった。 「あーないない。井川は俺だけじゃなくてみんなに優しいからなー。」  それを見事に返球するのはTHE 自分への好意に超鈍感男・智裕だった。 (高梨さん……を長年受けてたんだよね…流石に同情するよ……。)

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