995 / 1000

旅の前の日⑧

「江川っちぃぃぃぃぃぃ!んな御無体なぁああぁぁ!」  少し離れたところから噂の主である智裕の泣きそうな声がしたので5人とも思わずそちらを見た。 「自分の力でやれ。そんでやってねーのは自業自得。」 「俺これ今日中に出さなきゃ留年させられるんだよおぉぉ!中間テストも打倒アメリケーノでいないんだよぉぉぉぉ!」 「そんなの夏休み前からわかってたことだろ。勉学を疎かにしたお前が悪い。」  どうやら修学旅行前に出された特別課題が終わってないらしい智裕がいつものように一起に泣きついていた。その頼みの糸も無残に切られようとしているところだった。 「もういい!今の俺には江川っち以外の手があるんだもん!な、井川!」  智裕は拗ねながらぐるりと井川を見つけてそちらを振り向く。  そしてあっという間に井川の席までやってきてひざまづく。 「神様仏様井川様あああああ!鬼に見捨てられた哀れな小僧にご慈悲をぉぉぉ!」 「ちょ、っと……え、ま、松田くん⁉︎」  井川は只々戸惑う、そして顔の温度が上がるのがわかる。

ともだちにシェアしよう!