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片付ける 第1話
----買い物になんか、行かなければよかった。
どこにも寄らずに部屋に戻って。
ありあわせの材料で夕飯をすませて。
のんびりテレビなんか見て。
眠くなったら布団にもぐりこんで、あの人の夢を見る。
そうしていれば、ずっと幸せでいられたのに……どうしてそうしなかったんだろう。
いまさら後悔しても、もう遅い。
ぐっと口唇を噛みしめると、僕は鉛のように重くなってしまった足を前へと踏み出した。
泣くな。
まだ、泣くな。
仕方がないじゃないか。
あんなにもお似合いの二人に、誰かが……僕なんかが、太刀打ちできるわけない。
ウィンドウ越しでも十分に、幸せそうな雰囲気は伝わってきたじゃないか。
――――――早く部屋に帰ろう。
そして、泣こう。
泣いて泣いて……泣きつかれたら寝て。
それから考えるんだ。
その日僕は、なによりも大切だと思っていた恋人が、僕だけの人ではなかったことを知った。
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