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「もしそうなら、児童相談所の担当者はよっぽど暇なんだな。悪趣味だし。つーか、そんなにアンアン言ってねぇ。さすがにご近所さんに配慮するわ。ちびっ子もいるし」 「じゃあ、ベッドがギシギシ……」 「してねぇだろ」 「知ってる知ってる。2人で暮らす時、ベッドフレームとマットレスだけはいいの買ったもんね。家電はまこが1人暮らししてた時のやつ持ってきたのに」 「下手にデカいサイズ買って窓から搬入したから、いたたまれない思いでご近所さんに挨拶回りに行ったの思い出したわ。アレ、きっつかった〜。あら、あのベッドで一緒に寝るのね、とか思われてそうで」  シングル2台にすりゃよかったと言いながら、まこはぬるくなったほうじ茶を口に運んだ。ほんの少し表情がやわらぐのを見て、安心する。  空気を読んでいたらしいお腹が、2人同時にグゥっと鳴った。 「……ふふっ。お腹減ったね」 「ちょ、どんなタイミング!」  顔を見合わせて笑って、幸せだなぁと噛みしめてさらに笑う。 「やっぱり、今からご飯作るの大変だし、外に食べに行こうか。ギットギトの背脂ラーメンの店、何時までだっけ?」 「ほんっと、悪意のある言い方するよな〜。ま、いいけどさ。ラーメンって美味いとか不味いとかじゃなくて、好みの問題だし。……あ、のさ。この間オープンしたとこは、脂で腹壊しそうだからまた今度な。今日は軽く食べられるのがいい。そんで、ちょっと遠くまでドライブしよう」 「ふふ、了解。遠回しのおねだり、かーわいいなぁ。お腹壊したらエッチできないもんね。久しぶりにホテルにお誘いなんて、声が抑えられないくらい激しいのがご希望?」 「ふざけた事言ってると、夕飯ラーメンに変更するぞ。あーあ。俺、もうラーメンの口になってきたわ。麺が見えなくなるくらい脂増したい気分」 「そんなつれない事言って〜。あとで後悔するのは、まこのく・せ・に」  握られたこぶしからさっと逃げる。  機会があったら試そうと買っていたコンドームをポケットに突っ込み、財布と鍵を手にして、2人の愛の巣にそっと鍵をかけた。  3人で暮らすことになるのは、何年か後のこと。

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