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「あわよくば里子から養子にって気持ちがなかったわけじゃないよ。……だけど純粋に、わけあって親元から離れた子に、愛情いっぱいの家庭で育ってもらいたいと思ってる。俺だったらさ、同性カップルの子供でも、一緒に飯食べて、毎日笑いあって。そんな家庭で育ちたかったもん」  父さんが嫌いだったわけじゃないけど、あれは子供がまともに育つ環境じゃなかった。親の側が一番だなんて、当事者なら言えないよ。  まこは悲しそうに、でもきっぱりと言い切った。  今この瞬間も、愛情を求めながら苦しんでいる子がいる。そしてまこのように、どこかが欠けたまま大人になるのだ。  何もないのにまこがふと暗い目をする時、俺はただ寄り添うことしかできない。大人になってから必死に愛情をそそいだところで、子供の時に受けた傷を癒すことはできないのだ。 「……まこが辛くないなら、もう1回チャレンジしてみる?」  今にも壊れそうな横顔に、「やめよう」とは言えなかった。昔のまこを見捨てるような気がして、決意できなかった。 「ん〜……」  まこは視線を爪先に落とし、必死に言葉を探していた。そして、申し訳なさそうに呟く。 「ちょっとだけ、休憩する。そんで、また頑張る。……善はまだ、付き合ってくれる?」  男らしくなったまこのいじらしい上目遣いに、不覚にもキュンときた。  答えが決まったなら、これ以上重苦しい雰囲気でいたってしょうがない。どんなに助けたくても、自分が先に壊れてしまったら元も子もないのだ。  壊れる前に撤退した恋人に“よくできました”スタンプを押してあげたい。インクをつけたら怒られそうなので、かわりに頬っぺたにキスをしておいた。 「もちろん。どこまでだってお供しますよ。……で、不認定だった理由はなんだと思う? まこが夜アンアン言いすぎたからかな。そんなふしだらな家庭、不適切です!的な」  まこはあきれ返った目を俺に向けてきた。

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