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第3話 こんな日常
予定通り東京へ戻って。
その翌日からまた忙しない学生生活……
今日もまた生徒指導室に呼び出されていた俺を
親友の国枝あつしが待っていてくれた。
俺もあつしも一昨年喧嘩が原因で停学を喰らい、
もう1回3学年の勉学を深めている。
(要するに留年した)
多分、来年は卒業出来るだろうけど……
ファイナルアンサーは夏休み明けにある特別追試験の
結果次第だ。
「―― 東っちの話し何だった?」
「この前の呼び出しで志望校のレベル落とせって
言われたから、てきとーにBランクの中から選んだら
適当過ぎるって怒られた」
俺の言葉にあつしは大笑いした。
「――そういえば! 松浪のじっちゃんの
手伝い予定は?」
「例年通り年末年始は休みなし」
「やっぱりか。今年こそはカウントダウン行けると
思ってたのになぁ……」
テキ屋・露天商は年末年始こそが一番の
かきいれどきなんだ。
けど、そうゆう甘い誘いにはちょっとは……
いや、大いに気になる。
「……そころで、誰と?」
「俺と、詩音と ―― まだ未定」
詩音とはあつしが今交際中の彼女。
うちらと同じ学区内にあるバリバリのお嬢様学校、
星陵女学館へ通っている1年生。
実はあつし、海産物とバター・生クリーム・チーズ・
生ハム等の加工食品を中心に取り扱う老舗専門商社
『相模屋』の御曹司。
相模屋グル-プはディズニーランドの
メインオフィシャルスポンサーなので
毎年カウントダウンのチケットが株主優先特典で
手に入る。
―― が
何が楽しくて恋人達満載のデートスポットに
独り身の俺が行かねばならないのだ!
と、言っても、年末年始は超忙しいし。
「じゃあ、もし、お祖父ちゃんがオッケーしてくれて、
あつしと誰も行く奴が居なかったら行ってやっても
良いよ」
「うわぁぁぁ上から目線!」
わざとらしく怒るあつしに笑いながら、
立ち上がる。
「じゃ、俺は今から相模屋食品の売上を伸ばしに
行って来るっす」
「よろしく! 仕事頑張ってぇな」
笑いながらあつしと別れて外へと向かった。
クリスマス……恋人……
欲しいのは欲しいが、
デートをする時間も金も無い!
大学に入るまでそっちはお預けかなぁ……
働け! 勤労青年!
俺は気合を入れて走り出した。
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