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第25話 祠堂学院にて

「―― ゅうじ ―― りゅうじ?  ……おい、リュウってばっ」 俺はいつものように学校給食用食材の配達に便乗し 祠堂学院に来ていた。     同じ関東に根を張るご同業者と小競り合いが 絶えなくなってから、 こっちも身の回りが何かとややこしくなり、 自分が出張るような営業は控えていたので、 学校でのツナを見るのはかれこれ*週間ぶりだ。 いつの間にか昼休みに突入し、 屋上でひと息入れていた俺の傍らには 保険医(養護教諭)日向が来ていた。 「……なんだこいつ?  目ぇ開けたまま寝てんのかぁ?」 キラキラして見えたり、触ってみたくなったり…… 所かまわず押し倒したくなったり ――っ、 俺の執着も末期だよなぁ……。     「なぁ竜二ぃ、百面相の練習でもしてんのー?」 そこへ、皆んなの嫌われ者・数学教諭の松田登場。 「日向先生やっぱりここにいたぁ、すぐ来て下さい」 「はぁ?」 「おや、あなたもいらしてたんですね、手嶌さん」 俺と松田&教頭山ノ内は、自他共に認める犬猿の仲だ。 俺と日向はさっぱり訳が分からず顔を見合わせ、 とりあえず松田について職員室へ向かった。 すると、奥まった応接セットのソファーに 綱吉と山ノ内が向い合って座っており ――。 「いいか、松浪。その脅しに遭っていた他校の生徒は お前の名前で脅されて仕方なく金を出したと言ってる んだ」 御前の正式な養子となった後でも、新暴対法のおかげで 綱吉がこの学校へ通い続けるには数々の関門をクリアー しなければならなかった。 その中の条件のひとつが ――、 ”本校内では九条を名乗らない”そして ”いかなる反社会的暴力にも、それに類する集団や組織 などにも一切加担しない”という、ものだった。 そんなに綱吉が目障りなら、さっさと退学にでもすれば 良いものを……。 あぁやって妙な因縁をつけ、ネチネチいたぶるのは。 いっくら退学にしたくても、理事会命令で出来ない。 綱吉に対しての意趣返しなのだ。 因みに九条家からはつい先日も”松浪綱吉”名義で 体育館と屋内プールの修繕費用を寄付したばかり。 「……その強請り常習犯って奴に俺が指示してたって 証拠はあるんですかー?」 「あぁ、もちろんあるとも。その生徒の体は痣だらけ だったてなぁ。警察から報告があったよ」 はーあぁ?? なんだ、そりゃあ。 バカ言ってんじゃねぇ。 んなモン、誰がつけたか?  なんて何とでも言えるだろがっ! なんでツナがヤったって決めつけ ―― あっ。 『あいつくらい強くなると勝手に不良共が挑んでくる、 良くも悪くも』 あつしが言ってたアレはこうゆう意味だったのか。 それをツナの事をロクに知らない連中が鵜呑みに して……。 「なぁヒデ、うちのツナが悪魔だって言い出したの、 生徒じゃねぇのか?」 「んンにゃ、俺は先輩達から聞いたが」 「―― いい加減認めたらどうだ?! 松浪。 他にもお前の悪行ネタは挙がってるんだぞ」 「あぁ、たっくもうっ! ツナっ、なんで何も 反論しないんっすか?!」 「前はそうしてたけどさ、 何か言ったところで通じると思う? こいつらに」 「コラッ、松浪。先生に向かって”こいつら”とは 何だっ! 手嶌さん……あんたはもう部外者 なんだから引っ込んでて下さい」 ヽ(`Д´#)ノ ムカッ ……何気に腹立つ。         「お前らが ―― お前みたいな生徒がいるせいで 学校の信用はガタ落ちなんだぞ。 少しは反省したらどうなんだ、松浪」 あんたみたいな、 生徒に全く信頼のない教師がいるって事は どうなんですかね? 松田先生。 それに、こんな場面をこう長々と見せつけられると、 さすがに温厚な俺も堪忍袋の緒が切れた。 腹立ちまぎれに、 近くの壁へ思いっきり拳で風穴を開けてやった。 ガコン! という、 鈍い音と共に砕けたコンクリート壁に 山ノ内も松田も目が点だ。 「て、てしま、さん……?」 「山ノ内先生、でしたっけ?」 「な、な、何、だね」 「松浪綱吉は強請りやタカリ・カツアゲそうゆう卑怯で セコい真似をする奴じゃありません。保証します」 「な、何を根拠にそんな事を ――」 「それは……そうゆう奴、だからです」 「「は、ぁ??」」 ⇐ 山ノ内と松田。 「じゃ、そうゆう事で。ホラ、行くぞ、ツナ」 「えっ ――」 山ノ内と松田に負けず劣らず唖然としてる綱吉を 引っ張りさっさとこの部屋を後にした。

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