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1-出会いました!
ノイズにも等しいテンションあげあげトランスサウンド全開のクラブ。
「コイちゃん、マジかわいーわ」
カウンターでゲス大学生に耳元でしつこく絡まれているのは、一見えろ軽そうなカワユイ女子。
さっきからスツールをかつかつ言わせているピンヒール。
股上浅めな太腿丸出しデニムショートパンツ。
オフホワイトでスッキリめロゴプリントTシャツがよく似合っている。
「彼氏いないんでしょ? 俺と付き合お?」
うっぜーーーー。
この店うるせーし、こいつもうるせーし、早く家帰って寝てぇ。
コイちゃんこと紅唯千 はれっきとした男子高校生だ。
クラス女子の悪フザケに乗っかって女装参加したカラオケ合コン、結果的に一番もててクラス女子はしらけムード、たちの悪いゲス学生に紅唯千が絡まれても全員無視して薄情にも帰っていった。
「これ、飲も?」
「これ、酒じゃね? 俺、未成年だから飲めねー」
「俺」という一人称や男子感丸出しの喋りをまるで気にすることなく、ゲス学生は「お酒じゃないよ、ジュースだよ」と、ベリーミルク(酒)を紅唯千に勧める。
甘いアルコールをガブ飲みしてしまった紅唯千。
……なんかふわふわしてきもちいーかも……。
酔っ払って、ふにゃふにゃし出して、まさにゲス学生の思う壺、お持ち帰りコースに誘導されかけた、のだが。
ゲス学生とは反対側にいた相手に紅唯千はふにゃふにゃもたれかかった。
いつの間に隣に座っていた彼にぴったりくっつく。
「ふにゃーー……ごろごろ……」
紅唯千がふにゃふにゃごろごろしている相手はどう見ても堅気の人間じゃあなかった。
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