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「三ヶ月振りだよ、辰巳さん!三ヶ月!季節変わっちゃうくらいの長さだよ!?俺ぽちゃってないかな!?言われた通り女装してきたけど、久々女装したんだけど、変じゃない!?このパンプスかわいっ?このマニキュアよれてないっ?化粧ノリ大丈夫かな!?前髪おかしくな、」 辰巳を前にしてぶわーーーっと一気にしゃべりまくった紅唯千ははたと口を閉ざした。 やっべぇ、こどもか、俺。 テンションあがって全力で話しまくって、大人の辰巳さん、ヒいてんじゃね? 機械仕掛けみたいに急に一時停止した紅唯千に辰巳は小さく笑った。 長身にダークスーツを着こなし、黒髪を撫でつけ、多くの配下を抱える組長にふさわしい鋭い眼にサングラスを添えた男は一回り以上年下の恋人の頭を撫でた。 「三ヶ月ぶりか」 「う……うん、三ヶ月」 「俺は毎日会ってたがな」 辰巳は人でごった返す駅前広場の片隅で人目も憚らずにキョトンしている紅唯千の耳元で囁きかけた。 「夢ん中で毎晩お前とヤリまくってた」 「ッ、ッ……す、す、すけべ!」 「今日はお前の行きたいとこに行ってやるよ」 「え!じゃあ買い物行きたい!着替えたい!」 「わざわざ着替えんのか」 「辰巳さんの選んだ服着て遊びたい!!」 「……押し倒すぞ、コイ」 「ええええっ!?」 三ヶ月振りのデートに柄にもなく辰巳も内心はしゃいでいるらしい。 そんな二人を人ごみに紛れて監視している人間がいた。 「小縣の野郎、この状況で女とデートか」 「あれ絶対ぇ女子高生っすよ、JKっすよ、かわい」 田奴鬼組の組員だった。 「かわい、じゃねぇよ、あの女拉致って見せしめとして……だな」 「うおお……ッコーフンする……ッ」 先日の発砲事件で幹部が負傷し、ヒットマンを差し向けてきた辰巳への復讐として紅唯千をかどわかす気満々のようだ。 「その前に何か食べたい!焼肉がいい!」 なーんにも知らない紅唯千は辰巳の腕に無邪気にじゃれつくのだった。

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