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「ちょ、ちょっと短すぎ、ます、しゃがんだらぱんつ見えますコレ」
「俺の選んだモンなら何でも着るんだろうが」
「うわっ? 店員さんの前でお尻さわんな!」
「つれねぇな」
「これむり!やだ!スケベ女って思われる!」
「十分スケベだろうが」
「だからお尻さわんな!」
セレクトショップの試着コーナーできゃっきゃしている組長と女装男子。
なるべく二人にバレないよう棚の裏に隠れながらも完全浮いている田奴鬼組組員。
「クソ、うらやましい」
「俺もあんなエロいカノジョがほしい……」
「お。小縣の野郎、奥に行ったじゃねぇか、今チャンスだな」
辰巳が離れたのをいいことに敵組員二人は紅唯千がいると思われる試着室の前へ。
騒がれないよう片方は猿轡を、もう片方は脅しをきかせるための飛び出しナイフを翳して。
閉ざされていたカーテンを一気に開いた。
がっっこん
「着替え中に随分と大胆な覗き見だね」
中にいたのは紅唯千ではなく。
辰巳を補佐する若頭の一人、狂犬ならぬ狂猫と恐れられている美沙都だった。
どう見ても堅気リーマン、地味めなようでいて実は綺麗な顔立ちをしている眼鏡スーツの美沙都からサイレンサーつきの銃を額に押しつけられて固まる敵組員。
「……手間が省けた」
もう一人の組員は、キャップを目深にかぶって客に紛れ、自分達を監視していたもう一人の若頭・亜難に猿轡を奪われて自分が口を塞がれる羽目に。
そう。
対立組織と目下抗争中である辰巳が丸腰でいるわけがなかった。
彼は最も頼りになる武器をちゃんと用意していたのだ。
一方、その頃、当人らはというと。
「辰巳さん、なんで裏口からこっそり出てきちゃったの!?」
「そういう気分だったんだよ」
「あ! もしかしてお金なかったの!? どーしよ、俺、服着たまんまだけど!? 万引き犯になっちゃうよ~ッ!!」
ちゃんとカードで支払いを済ませていた辰巳は不安がる紅唯千に苦笑した。
「で。次はどこ行く」
人通りのある遊歩道に出た紅唯千は口ごもる。
「なんだ」
「えーーーと、行きたいイベントがあって、でも、辰巳さん嫌がるかな~って」
「俺をなめんじゃねぇ、紅唯千、最初に言っただろうが、お前の行きたいとこなら火の中水の中どこだろうと行ってやる」
「え。火の中とか水の中とか、そんな危ねーとこ行かないし?」
「……」
「いででででッ!ほっぺたつねんな!」
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