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第1話

「瑛翔(えいと)ー今日暇?」 廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。 声の主は親友の久城祥馬(くじょう しょうま)だった。 「今日?部活あるけど」 「それは同じ部活なんだから知ってるけど、その後!」 祥馬は笑いながら言う。 「その後なら…」 「一緒に帰ろうぜ」 「あ、うん」 いつも一緒に帰ってるのに、何故かこの日は改めて一緒に帰ろうと言われた。 俺は中学からの親友、祥馬のことが好きだ。 それは友情的な意味としてじゃなく、恋情的な意味での好意。 この想いを自覚したのは中2の時で、もう3年も想いを募らせている。 でも、この想いを本人に伝えるつもりはない。 特別な関係になんてならなくていい。 そもそもなれるなんて思ってない。 そんなことは、望んでいない。 ただ、側に居られればいい。 それだけでいい。 そう思ってた。 この日、祥馬から恋人を紹介されるまでは。

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