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第3話

「…そうなんだ」 「あのっ、桐崎澪央(きりさき みお)って言います。祥馬くんとはその、まだ付き合いたてで…」 恥ずかしそうにモジモジする姿は、きっと側(はた)から見れば可愛いんだろう。 いや、俺から見ても可愛いんだけど。 「可愛いだろ?……瑛翔?」 「…いや、おめでとう。まさか祥馬に彼女が出来てたなんて知らなかったよ。全然そんな話してくれなかったし」 言ってから、ちょっと嫌味っぽくなってしまったかなと思った。 「ごめん、言わなくて…」 「別に責めてるわけじゃないよ。こんな可愛い子と付き合ってるなんて羨ましいなって思っただけ」 そう思ってもないことを口にすると、照れたように桐崎さんは顔を赤くした。 「ちょ、瑛翔、澪央のこと口説くのはやめろよ〜」 「はぁ?口説いてないし…」 「瑛翔くんってかっこいいね」 「…どうも」 「ちょっ!澪央!?」 「へへっ、祥馬くんもかっこいいよ!」 「このやろー」 「きゃー」 祥馬が桐崎さんの髪をくしゃくしゃと掻き回す。 そんなイチャつきを目の前にして、胸がズキズキと痛み出す。 本当に2人は付き合ってるのだと、見せつけられた気がした。 「って、紹介も終わったし飯食おうぜ。腹減ったー」 祥馬はそう言いながらメニューを開く。 「祥馬くんって何が好きなの?」 「俺はハンバーグ」 「ふふっ子どもみたい」 「何だよーいいだろー?」 「美味しいよねハンバーグ。私もハンバーグにしようかな」 なんて、会話を目の前で聞かされる。 胸の痛みは増していく。 こんな状態で一緒にご飯とか、地獄かと思いながら、何とか取り繕い、終始笑顔でいた。

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