「やっぱ経験豊富だと違うよなー」 「何言ってんの…っていうか祥馬だって全くモテないわけじゃないのに彼女ができたの桐崎さんが初めてだし…」 「本当に好きな相手としか付き合いたくねぇじゃん」 「あ、そう…」 それを俺に言うんだ。 「お前だって、妃捺ちゃんのこと好きなんだろ？」 「祥馬は純粋でいいね」 「何だよそれ」 「別に？」 思わず冷たい言い方になってしまった。 でも、祥馬は全く気にしていない様子で話を続ける。 「妃捺ちゃんとはどこまでいったんだよ」 「どこって…」 「あ、場所の話じゃねぇぞ？」 「分かってるよ…」 この間のデートの帰り際、椎河さんからキスをされたことを思い出す。 「瑛翔ー？なに、まさかもう…」 「ばーか。俺がそんなに手が早いように見えるの？」 「…見える」 「もう知らない。もう一生祥馬の相談乗らない。お前なんて一生童貞でいればいいのに」 ふいっと顔を背けると、焦る祥馬。 「ごめん！俺が悪かったからっ」 「……」 「瑛翔〜」 「……」 「瑛翔ぉ…俺には相談できる相手がお前しかいないんだよ〜」 相談相手ね。 「次言ったら許さないから」 「はい！」 ビシッと祥馬は敬礼した。 それに笑って、その後は妃捺ちゃんとはどこに行ったんだとか、澪央のここがかわいいとか、そんな話をされて喫茶店を出た。 「今日はありがとな」 「うん」 「…じゃあ、俺寄るところあるから」 そして駅前で別れた。 一人になると途端に寂しさが増した。