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第201話

家の中に入ったタイミングで、母さんが帰って来た。 そして、何の気なしに言った。 「あ、今日は祥馬くんじゃないのね?あなたは初めましてね?いらっしゃい」 「あ…」 「…こんばんは。俺、瑛翔くんと同じクラスの鷹来珀音っていいます。すみません、お邪魔します」 「わざわざありがとう、珀音くんね。あんまり遅くならないようにね」 「はい、すぐ帰るので」 そして俺たちは無言のまま、さっきまで佑嗣と居た自室へと戻って来た。 「神代」 「ごめんっ…」 「何?何に対しての謝罪?」 いつもとは違う声音に背筋が冷える。 「神代、俺と約束したよな?何かあったら、すぐに俺に連絡して欲しいって」 何も言えないでいると、鷹来くんは溜め息を吐いた。 どうしよう… 何から話せば… 「神代、ゆっくりでいいから、話せる?」 先ほどの口調とは変わって、優しいものでホッとする。 俺は頷き、口を開いた。 「あの、鷹来くんに会った日、家に帰り道に祥馬が居て…」 「うん」 「その時、鷹来くんのことを好きだと思った方が楽だから、そう思い込みたいんじゃないかって…祥馬がだめだから、苦しみたくないから、鷹来くんの方へ逃げたんじゃないのかって…言われて…」 「その通りだと思ったの?」 「違うっ…思ってない…でも、」 キスされた。 それを完全に拒否できなかった。 これを言ってしまったら、鷹来くんは、俺のこと軽蔑する…?

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