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第260話
最初こそ、印象は最悪で、マイナスからスタートしたけれど、
ずっと冷たかった心が、暖かくなった。
だから裏切られたと思った時は、本当に辛かった。
でも、好きになったから、
早く捨てなきゃってばかり思って、
でも結局何も捨てることなんて出来なくて、
自分の弱さを思い知った。
強いところもあるって言われたことがあったけど、全然そんなことなかった。
何ひとつ捨てることが出来なくて、
傷つけて、酷い言葉を言わせてしまったことだってあった。
あれが本音だったからこそ、辛くて仕方なかった。
それでも、届いた俺の想い。
受け取ってくれた。
だから、ちゃんと乗り越えなきゃいけないと思った。
そこに至るまで何年もかかったけど、
本音でぶつかり合って、やっと、終止符を打てた。
好きだった気持ちを捨てたわけじゃない。
捨てることばかり考えていたけど、
最初から、捨てなくてよかったんだ。
俺は、大切にしまった。
あの頃の気持ちをすべて。
そして今はーー
「瑛翔?…校舎見つめて何してんの?」
「色々あったなーって」
「ふはっ、何言ってんの」
「想いを馳せてたんだよ。もう卒業したんだなぁって」
「寂しいのは分かるけどほら、行こう。打ち上げ遅れるよ」
「そうだね」
珀音と並んで校門を出た。
隣を見上げれば、珀音は俺に笑いかけた。
だから俺も笑い返した。
END
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