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第9話

ふわふわとした意識の浮上で目が覚めると、拾人さんの部屋だった。 隣には拾人さんの寝顔がある。 下腹部が拾人さんとの初めての性交渉を色濃く主張するように痛む。 痛みに悶えつつも、幸せで満たされている。 首を動かせばピリリとした痛みがある。 そこに指を這わせば、瘡蓋のような物を見つける。 全てが現実なのだと漸く実感すると、現実問題に行き当たった。 僕はまだ小学生で胎内で子供を育むには、身体が小さ過ぎる。 このままじゃ妊娠しちゃう!! 僕は隣で眠る拾人さんを揺さぶって起こす。 拾人さんが起きて、おはようのキスをしてくれてホッコリした気分になるが、今はそれどころじゃない。 妊娠の事を伝えると小さな箱から避妊薬を取り出し「沙雪との赤ちゃん欲しいとこだけど、それはまだ流石に早いね」と、拾人さんの口に水と一緒に放り込み、僕にキスと一緒に飲み込ませる。 避妊が間に合い、互いに安堵の息を吐く。 避妊薬は昨日の夜に緊急外来で慌てて貰ったのだそうだ。 拾人さんは番制度で休暇中だけど、小学生に今後は不要だけど今必要なヒート休暇は有るのだろうか? 僕のヒートは他のΩに比べて、異常に早くてヒート抑制剤を持っていなかった。 早いだろうとは思っていたけど、後一、二年の猶予はあると考えていたからだ。 性交渉だって認められるのは十二歳からで、僕はギリギリ十一歳。 同時に番を得たのもありヒートに関する心配は無用となった。 拾人さんがゾンビのようなΩ女に煩わされる事も無くなる。 差し当たっての問題は教室でヒートしてしまったため学校に行き辛い事と、性交渉に関する法律だ。 通常は十一歳で番が居るのは法律違反だ。 僕は頭を抱えてうんうん唸ってしまって、その様子を見ていた拾人さんに笑われてしまった。 悩みを打ち明けると、拾人さんは簡単に解決してくれた。 まず、一緒に転校してしまう。 それから法律違反と言っても明後日が誕生日だから、誕生日を過ぎるまで家に篭って睦み合えば誰も怪しまないしバレない。 え、学校の児童資料に誕生日載ってるんじゃないの? 拾人さんが優秀な頭でどうにかするらしいです。 なにせ、拾人さんの立場の方が危ないから。 転校に関しては特に友達もいない僕にとって何の障害も無いから賛成。 思春期な僕が性的な興奮でおかしな状態になったのを、拾人さん以外に見られてしまったのは非常事態で緊急避難したいからだ。 拾人さんは先生をしていて、途中で別の学校に移ったりして大丈夫なのかな?と、心配ではあるけど要領も頭も良い僕の旦那様は何でも熟してしまうのだろう。 αが故に頼もしくてαが故に頼りなかった王子様を僕は無事に守り切り、僕だけの王子様として愛し合って生きていく事が、こんなに早く実現出来るなんて。 なんでも出来ちゃうαバースだけど、足りないピースを番のΩバースが埋める事で、漸く完全無欠の頼れるαバースになるんだなぁ、なんて烏滸がましくも考える。 Ωバースは弱々しく番のαバースを捕まえるまで、性的に社会的に弱者という位置付けで、それでも愛する番のαバースの急所とも言える他のΩバースのフェロモンから守ることが出来ちゃうんだ。 どちらも不完全な進化だからこそ、合わさるピースはピッタリで、拾人さんと僕は二人で一つになるんだ。 僕が守るたった一人の王子様。 終わり

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