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プロローグ①
※ ※ ※
――風に吹かれて炎がゆらめく蝋燭が突き刺された真っ白なクリームのケーキ。ちょこんと真ん中に血のように真っ赤な苺が1つだけのっかっている。
――そのケーキの周りを取り囲むようにして僕の大好きな人達が笑顔で集まっている。
――床には僕のために皆が用意したカラフルな包装紙に包まれているプレゼントの山々。形は大小様々だ。
――部屋の中には皆が僕のためだけに歌ってくれているハッピーバースデーの歌子が響き渡る。
――おず、おずといつも通りに弱気な態度で僕に血のように赤い薔薇の花束を差し出してくる幼なじみのエディ。
「さあ、可愛いアレン……ケーキの火を吹き消して――」
そう誰かの声が聞こえて――、
思わず目を瞑って――、
蝋燭へ息を吹き掛けた――筈……だったのに。
はっ……と意識を取り戻した時に真っ先に僕の目に飛び込んできたのは――見知らぬ建物のひび割れた灰色の天井だった。よくよく見れば、さかさかと小さな蜘蛛が這いずり回っている。
体がなかなかいうことをきかない……。
今のこの状況に対して訳が分からず混乱する僕が左手の違和感に気付いて目線だけでそちらを恐る恐る確認してみると、
さっきまで、誕生日パーティーに参加してくれていた僕の幼なじみの1人でちょっぴり意地悪なジャックが血まみれでぐったりしているという衝撃的な光景があったのだった。
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