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Epilogue-3

海外進出で目出度くアメリカに支店を作り、(給与は上がったものの)災難にも萱島が飛ばされた。 支部長というイマイチ分かり難い役職を貰い、国外ライフを満喫している…訳もなく、連日これまでの3倍近い仕事量に忙殺されている。 「もしもし本郷さん…!?再婚って伺ったんですが一体どういう…ん?何で知ってるって…ちょっと待って下さいその言い草じゃあ…まさか…」 雲行きの怪しい会話に部下が目を覆った。 昼下がりからとんでもないニュースだった。 電話を終えた支部長は目が死んでいるし、その部下はハッパでもキメた様な言動でふらふらしているし。 帰ってきた渉外担当の困惑が浮かぶ。 ところで立ち上げは散々な萱島だったが、意外にも人選は社長が融通を利かせてくれた。 本部の側はすっかり骨子が出来上がっていたし、牧が居ればどうとでもなる。 よって遠慮無く本部一優秀な彼を頂戴し、寂しいからと千葉まで無理矢理引っ張った。 寝屋川隊長は期間付きで渡米しており、件の副社長も何やかんや此方に居る。 社長は変わらず消息不明なものの電話くらいは繋がる。 忙しくはあるが割とメンツは変わらない。 まあまあこれまで通り、楽しい日々を送っていた。 「悪いけど…一旦買い物行ってくるわ」 憔悴しきった報告に、これまた憔悴しきった答えが返る。 覚束ない足取りで玄関を跨ぎ、秋の乾いた街へ踏み出した。 さて歩いて向かうか。 スーパーまで15分は掛かるが気晴らしになる。 正直タスクも多いが、考え事が多いのが現状だ。 「…あ」 ところが数メートル進んだ辺りで、覚えのある車体が姿を見せた。 本体何千万。維持費は幾らやら。 車も凄いが、車を停めて降りた男はもっと凄かった。 道行く女性が見事に振り返る。 その熱い視線を物ともせず、ダークスーツに身を包んだ隙のない姿が颯爽と歩いてくる。 悔しい事だ。毎日目にしようが改めて見惚れる。 恐らく間抜けに止まっていたであろう、萱島に部下は間近で首を傾げた。 「買い物?」 「…ええ、そうですね」 何て格好良い男が部下か。 否、それ以前に。 「宜しければ送りましょうか、お嬢さん」 態と気障に手を差し出した戸和に、顔を赤くして唇を引き結んだ。 「誰がお嬢さんだよ…」 萱島は文句を吐きつつ、さっさと目前の手を取った。 握り締めた感触に人知れず口元を緩める。 互いの指に嵌った指輪がぶつかった。 新しくも一生を共にするであろうそれは、小さな福音を奏でて連なった。 「そうだ、本郷さん再婚するって」 「…何?」 「もうお通夜だようちの支部」 気を遣わない雑談を並べながら、導かれるままに車内へ乗り込む。 見上げればまあ珍しい、さっきの自分と同じような反応を浮かべる戸和へ、萱島はついつい笑い出していた。 「どういうことだ、相手は?」 「知らない。答えてくんない」 「何だそれ」 エンジンの重低音が心地よく、口角を上げたままシートへ沈み込む。 フロントガラスに切り取られた空は、初秋特有の乾いたペールブルーが広がっていた。 「9月4日…」 ふと腕時計を見た相手が呟く。 用向きでもあるのかと引っ掛かり、萱島は首を傾けた。 然れど問う間際、口を開いたところであっと合点がいっていた。 「今日が何の日か分かるか」 「…にゅ、入社日?」 「そう、俺と会った日だよ」 そっちを恥ずかしくて言わなかったんだ。 何だか記念日など、逐一覚えている方が妙じゃないか。 「…変わった人間が来たとは思ったが」 顔を赤くして黙りこくった相手を横目に、戸和はアクセルを踏んで車を走らせる。 「まさか結婚するとは思わなかったな」 しれっと吐かれた台詞は、今度こそ車内へ沈黙を呼んでいたが。 そんなもの、こっちだってまったくその通りだと胸中で同意する。 火照る頬を明後日へ向け、過ぎ去る景色へ意識を投げようとする。 窓ガラスには目を逸らした筈の彼が映り込み、萱島は愛おしさに人知れずその鏡像を突くのだった。       CAST Kayashima Sana Seto Izumi (Towa) Kanzaki Haruka Hongo Yoshise Neyagawa Iori Maki yoshi Mamiya Koji Chiba Yuya Kaido Ryu Soma Wataru Harrison McDonnell (Wood) Rose Misaka Kosuke Kurokawa Hishida Yazawa Chizuru Yazawa Misaki Patricia James Minghella Kiritani Subaru Ronald Taylor Burt Diefenbaker Started the serial in June 21th, 2015. The author was SA. Special Thanks : You Raven Investigation Company -Fin- このお話を見届けて下さった すべての方に愛を込めて。 >>postscript.

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