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~プロローグ~
※ ※ ※ ※
【《elfyroid》は皆さまの生活に寄り添い――非日常の世界へ誘うことも可能です。さあ、あなたも《elfyroid》と非日常の世界へ……】
――ああ、まただ。
今日1日で、このcmを何度見たと思ってるんだよ――。
《elfyroid》ーーエルフィロイドは、今じゃ持っていない者がほとんどいないともいえる程に爆発的人気を誇る《携帯型エルフ》のことで、一時期前に流行った《携帯電話》と似たような位置付けの娯楽・情報検索何でも来いの非常に便利なものらしい。
ーーらしい、と俺がはっきりと断言しきれていないのは未だに《elfyroid》を手にとったことすらないからだ。
テレビから流れてくるCMは山ほど見るものの、綺麗なアナウンサーの姉ちゃんが此方に微笑みかけながら決め台詞を言うだけで、今イチピン、とは来ないがーー学校の奴らが互いに《elfyroid》自慢をしているので容姿だけであれば頭に思い浮かべる事はできる。
《elfyroid》が人気な理由は普段の生活が便利になるだけじゃないらしい。ぎゃん、ぎゃんと毎日毎日犬のようにやかましく付きまとってくる俺の幼なじみの夢々いわく――、
『elfyroidが人気なのは、その容姿が端麗で皆の目を癒すからでもあるんだよ……ゆうちゃん今まで知らなかったの?だっさ~……毎日毎日鏡みてナルシストぶるより《elfyroid》のことを、もっと調べれば~?』
との事だ――いけない、昨日言われた事を思い出したらムカムカしてきた。
それはそれとして、彼ら《elfyroid》には【女型】【男型】が存在していてーー鼻息あらく興奮しきって教えてくれた夢々とは別の友達いわく、どちらが生まれるかは完全なる運らしい。これだけでも意味が分からない。
どちらが生まれてくるか自分で決められる訳じゃないのかーー?
『ピンポーン……』
と、その時――玄関の方からチャイムが鳴る音が聞こえてきたため、俺は急いで玄関へと駈けて行くのだった。
「え~っ……山田優二さんですね……お荷物、お届けに参りました!!印鑑お願いしまーす」
太陽の光に照らされ、でかい段ボール箱を抱えながら営業スマイルを放ってくる配達屋の兄ちゃんが其処に立っていた。よくもまあ、朝っぱらから甲高い声で喋れるものだ――と、感心しつつも印鑑を押す俺なのだった。
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