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~プロローグ~

「それじゃ、ありがとうございまーす」 と、印鑑を押し終えてから、元気な挨拶をしてきた配達員の男を見送ろうとしていたその時――、 パサッ…… 俺から背中を向けてマンションの通路を歩いて行こうとしている配達員の男が何かを落としたことに気付いて、慌ててそれを拾い上げると彼の元へと駆け寄っていく。 「あ、あの……これ、落としましたよ」 「す、すみません…ありがとうございます……優二さん」 その配達員の男が落とした白いハンカチ(香水でも振りかけているが甘い匂いがする)を差し出すと、何故かぎゅうっと彼から手を握り返され突然の事に戸惑ってしまう。 ――更に、 ガチャッ……と俺達がいるすぐ横の部屋(因みに俺の隣の部屋の事だ)から扉が開かれる音が聞こえて、思わず嫌そうな表情を浮かべてしまう。 ――ぎゃん、ぎゃんと犬のようにやかましい幼なじみの夢々も1人暮らしのため、今――部屋の扉を開けるのは奴しかいない。 「なっ……ち、ちょっと……人の部屋の前で朝っぱらからナニしちゃってんの!?」 「あっ……えーっと……すみませんでした。山田優二さん……確かにお荷物お渡ししましたので、失礼しまーす!!」 朝っぱらから、やかましく吠える夢々の姿を見た途端に俺の手を握ってきた配達員の男は、そそくさと去って行ったのだった。 「夢々……お前、朝っぱら騒ぐなよ――近所迷惑だぞ……じゃあな」 「ち、ちょっと……ゆうちゃん……学校は!?まさか、またサボるつもりじゃ……っ……」 ――ガチャ…… バタンッ…… (ふう、ようやく静かになった……さて、この糞でかい荷物は……っと、どーせまた兄貴が余計なものを……) なんとかやかましい幼なじみから逃げ切って、部屋の中に戻ってきた俺は僅かに憂鬱な気分で段ボールをバリ、バリと乱暴に開けていく。 どうせ、いつものように下らないものしか入っていないんだろう――と、気楽に段ボール箱を開封していた過去の俺をぶん殴りたいと思わされるのはーーそれから少し経ってからの事になるのだが、この時の俺は知る由もなかったのだった。

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