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第23話 仲良しこよし
おっとりした声で現れたのは、保健室の主である真鍋だった。
年齢は知らないが、定年まであと少しといったところだろう。
白髪の混じった髪と皺の刻まれた顔を見れば分かる。
ニコニコと優しい顔をして、二人を見ていた。
「二人とも何してるの?仲良いのねぇ」
どこをどう見たら、そういうコメントが出るのか分からない。
とりあえず、この悪魔な男から救いだして欲しい。
「せ、先生‼あの、体育で転んでしまって…」
「あらまぁ、怪我してるの?じゃぁ保健室へいらっしゃい」
優太の側まで来て傷を確認した真鍋は、優しい笑みを浮かべた。
「歩けるかしら?」
「あ、はい」
「ん~でも、結構傷が…」
優太の返事などお構い無しで、側に居る甘凱に問いかける。
「甘凱くん。歩きにくいみたいだから、肩を貸してあげてくれるかしら?」
「はい。もちろん、いいですよ」
甘凱と真鍋は顔見知りなのか?
いや、校内で甘凱を知らない人間など居ないだろう。
そんな甘凱に真鍋が声をかけると、爽やかな笑顔で当然そのつもりだと頷いた。
さっきまでの悪魔っぷりは何処へやら。
「おい、おとなしくしとけよ」
「うわぁっ‼」
そうして再び、お姫様抱っこをされてしまう。
「甘凱くんは力持ちなのねぇ」
うふふふ、と呑気に言った真鍋の目には、優太をからかう光は見あたらない。
「二人とも仲良しなのねぇ」
「仲良しなんかじゃ…」
そんな声を耳にし否定しながら、他に誰も廊下を通りませんように…と思う優太なのだった。
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