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第22話 救いの声
答えたくない。
何故なら名前を知られると、悪魔と契約することになる…と、ネットか何かで聞いたことがある。
まさに目の前に居るのは、王子様に化けた悪魔と言っても過言ではない。
見た目爽やかで甘いマスクの美形。
モデルでパリコレに出てても不思議ではないし、どこぞやの俳優なんて霞んでしまう。
その美声で囁かれて腰を砕かない女性は、ほぼ居ないと断言できる。
そんな男が、実は性格がこんな悪魔だなんて。
女の子たちは知っていて、つきあっているのだろうか?
だとしても、自分は無理だ。
ご遠慮願いたい。
なので名乗るつもりはない。
「…いやだ」
「あ⁉」
「ヒイッ」
ポソリと呟けば、聞き取れなかったらしい甘凱がドスの効いた声で短く問い返してくる。
優太は、条件反射でビクッと体を揺らしてしまった。
さっきの傷口への仕打ちと、頭突きのトラウマが脳内を揺さぶってくる。
「おい」
「…」
「こら、平凡」
「平凡って言うな‼」
「なら名前言え」
ぐぬぬっと唇を噛み締める。
答えたくないが、答えなければ解放してくれない雰囲気だ。
「これは飾りか~?」
「痛タタタッ‼」
知らんぷりする優太の耳を摘まんで引っ張りだした甘凱は、フフンと笑う。
「なら答えろよ」
「ううっ」
またまた涙がちょびっと出てしまった優太に、甘凱が顔を近づけてきた時だった。
「あら、あら、ま~⁉」
そこへ第三者の声が割って入り、耳を解放されて優太はホッとするのだった。
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