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第1話 見つけた!僕の……

「アレイさんですか!?」  突進するかのように、詰め寄って『アレイさん』のトレードマークの、長く金色に輝く髪がたなびくのをそっと見つめ、僕はドキドキしていた。  だって、歩く伝説! その人が僕の目の前にいるだから。  冬の寒さはなんのその! 行き交う街中の人々は師走を体で表現したように、皆忙しそうに歩いている。  僕はといえば感動から震えが来てしまう。  僕を刺激してやまない人『アレイ・プロメス』さん。二十四歳。  人はこの人を『地獄の門番、ケルベロス』と呼ぶ。  決して人に懐かない。 「ん︙…? まぁそうだけど、お前、誰?」  キョトンと見つめてくる視線に僕はもう、心臓がドキドキとまるで、発作を起こしたみたいにときめいてしまって、持っているヴァイオリンケースを握る手が熱くうずいてしまう。 (先輩! この人が噂の、僕が尊敬しまくってる人。彼女を守るためにボクサーとやりあって、無傷で勝った人……とか、警察に囲まれても物怖じせずに、がくがくと震える相手を『こいつが犯人だから連行したら』とか言った人。マジカッコイイ!)  僕とは違って長身で、クールに見せる風貌と、そっけない視線。でも意外だったのが、もっとギラギラしているのかと思ったら、優しそうな目で、翡翠の大きな瞳が僕を捉えて、警戒するでもなく、見つめてくるだけだった。 (普通だったら、赤の他人に『ろくに』というか、初対面の僕に何故か名前を呼ばれ、声をかけられて不審がらないのだからすごい。  ましてやいきなり僕が名前を呼んだのにも関わらず、余裕そうな仕草で手には可愛いぬいぐるみときた。  流石は『ケルベロス』という異名を持つだけのことはある。それにしてもぬいぐるみに違和感を覚える。なにこれ、彼女にでもあげるのだろうなどと思っていたら) 「それ何?」  僕が抱えているケースをみて訝しげに問う。でも、こんな町中で広げるわけもいかないし、行き交う人の視線もなんだか痛いし、僕はつぶやいた。 「ヴァイオリンです」 「へー、弾けんの?」 「勿論です。僕の大事なパートナーです」  パートナーのヴァイオリンは人間じゃないから、声にはでないけど、きっと僕がパートナーと告げたことに喜んでくれていたらいいなって思ってた。 「とりあえず、こんなとこで立ち話しても仕方ないから飯食わね?」 「え、あ、僕はまだお腹……『ぐぅ~』――」 「今日はいい気分だからおごってやるよ。新作のこいつも手に入ったしな。嫌か?」 「滅相もございません! ご一緒させてください」  断ろうとしていた言葉よりも先に、口をついて出た言葉は『着いていく』の一言だった。

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