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第2話 まさかの……!

「お客様、大変申し訳なく存じますが、店内は未成年の方はお断りしていまして……」 「へ? 僕、二十一歳なんですけど。ほら、これ」  いつものこと。飲み会でいつも言われるから携帯している、年齢確認証代わりの運転免許証。  そこに映るは違和感丸出しの苦笑する僕のいびつな顔の写真。けれど今は打って変わって、僕はニコニコと微笑んでいるに違いない。 「大変申し訳ございませんでした。お客様、こちらの席へどうぞ。当店自慢のお通しものをお持ちさせていただきます。心ゆくまで味わいくださいませ」 「ここ美味しいから、気に入るといいけど」 「まさかまさか、アレイさんに奢っていただける日がくるなんて僕幸せです!」  眉間にシワを寄せ、なんだかちょっとアンニュイなアレイさん。どうしたんだろう? 「俺、リズっていうんだ。アレイは俺の双子の兄貴。間違うなよ。まぁ、瓜二つだからしゃーねーけどさ。あいつは、ビビリなの。俺の伝説ぜーんぶ自分のモノにしてんの」 「へ? アレイさんに弟さんいたんですかって、ええーってことはお手柄全部アレイさんが持ち逃げ? ビビリってえ? え?」  想像シていたアレイさん像がガラガラと崩れていく。だって、僕にいつも勇気をくれたのはアレイさんであって、目の前のリズさんのした武勇伝を盗んだなんて……ありえない。  蒼白になる僕の顔はとても信じられないといった眼差しを送ってしまうのだった。 『憧れ』話しに聞いたアレイさんがお飾りもののようで僕は思わず、泣きそうになっていた。 「アレイに憧れてたん?」  こくんと頷くと頭をワシワシと撫でられてしまった。 「アハハ……アレイじゃなくて、この俺に憧れればいいじゃないか。だろ? アレイはどちらかというと主夫に向いてるな。あれでいて、料理が得意だよ。今度うちに来るといいよ。紹介するよ。あのアレイさんを」  僕はその様子に『ップ』と吹き出してしまった。 「お前さ、なんか見たことあるんだけど……なんだっけ。ヴァイオリンに関係するなにかだったような気がする」  僕の名前も有名になったものだと自覚してしまった。正確には顔か。僕は九条氷雨(くじょうひさめ)二十一歳。芸能人ってやつだ。 「「遊び夜想曲(プレイノクターン)」」  あ……知ってたみたい。 「氷雨といいます。どうぞよろしくお願いします」  深々と頭を下げるとキラキラと目を輝かせ握手を求めてくるリズさん。意外にミーハーだな……なんて思ってたりしたら、 「兄貴がさ、氷雨さん氷雨さんってうるさいんだわ。ヴァイオリンの音色が色っぽいとか、氷雨さんに男の娘になってほしいとか言いまくってるよ」  呆然としてしまう僕。  僕の見た目は他のメンバーとは変わっているけど、一応ファンは居るはず? 何故か男性のファンが多いけど。

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