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第9話 にこり時々鬱

「二◯五号。ここが俺の部屋で。アレイとはいつもは隣の二◯三号つかってるんだけど。今日は、自慢したいからアレイとこに顔出して、俺の部屋いこうか」 「あ、はい。」  ピンポーン。 「あ? 開いてるからはいってくれば? 今いいとこなの。氷雨様ぁあああここ極上の笑み。笑みがいい。けど仏頂面の氷雨様もいいー」 「僕的には箒様推しです。箒様になら抱かれてもいい!! ちょっとリズさんのイケイケなところが雰囲気似てるし。ほのぼのしてて素敵ですよ~」 「わかってないなぁ~羽鳥は。氷雨様はクールなとこがいいんだよ。あ、そうだ、リズに言ってやろう今の抱かれてものくだり」 「わぁ、リズさん、おかえりなさい! って誰かつれて……!!!」  入ると、リズさんにそっくりなアレイさんと、もうひとり可愛らしい男の子がいた。その子が指さしてる僕を。  それに気づいたらアレイさんまでもが指さしてがくがくと震えだしている。 「お前ら大丈夫か?」 「えーっと……初めまして……九条氷雨で……うわ」  クッションを投げつけられる。痛くないけど何? 「絢斗、氷雨になにクッション投げつけてんの? 次やったら吊るして縛るよ?」  笑顔で怖いことをいうリズさん。 「僕のリズさんから離れろ!」 「あのなぁ。まだ付き合ってないだろう?」 「「まだ!?」」  アレイさんと声がかぶってしまった。僕としたことが。 「この間告白されてから返事してないからなぁーどうしたもんかなぁと」 「リズさんそんな腐れと一緒にいるなんて反対です。確かにヴァイオリン弾いてるときはかっこいいかもしれないけど、ファンに対してすっごい態度悪いから嫌い!」  ああ……日頃の行いが……。 「今度から気をつけるつもりです。笑顔の練習するんで、許してください」 「氷雨様ぁあああ。私に私に笑顔をください!」  僕は思わずリズさんの影に隠れてしまう。 「アレイ怖がるだろ。氷雨はおとなしいタイプなんだからガンガンいったら引かれるぞ? なぁ、氷雨」 「氷雨様のことを着やすく呼ぶなぁ。絢斗の姉を忘れたのか」  その話題を出されたリズさんは少し顔色が青ざめた。 「光(ひかり)はもうここにはいない。忘れるわけないだろ。大事な大事な恋人だった女を」  そうだよね。こんなにかっこいいんだもの。恋人いるよね。っていないってさっき飲んだ時いってたのに。あれ? 「絢斗、今日はお前の姉さんのこと思い出したくないから俺の部屋には絶対くるなよな」 「……リズ……僕が慰めてあげるのに」  しゅんとしてしまった絢斗さん。  なんだろうこの空気……僕いてもいいんだろうか?  日を改めて来ようかなぁ。 「あの、僕は今日は帰りますよ? 絢斗さんが寂しそうにしていますし、僕は……」 「……氷雨、気つかわせてごめんな。今日は俺、だめっぽい。一人にしてくれ……」  悲しそうな笑みを浮かべどこか儚げな様子。 (帰るフリしてお部屋に付き添っていこうかなぁ?) 「二人も来ないでくれ今日は一人がいい……」 「じゃぁ失礼します」 「送ってくるわ」  無言の二人。闇が深い。

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