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第15話
「久々の休みなんですよ。」
楽しそうに笑って、やはり飲み直そうと言われて
よく考えもしないまま、半分夢心地で頷いて
…そして
「キス、そんなによかったですか?」
「…っ、こっち見ないで下さい…」
冒頭の状況に至る。
目の前のその人は、確実に酔っていて
俺は、その人に襲われてるわけで
「照れちゃって、可愛いですね」
甘い声で囁くなんてずるい。
俺の抵抗も虚しく、全てシャツのボタンが外され肌が露わになる。
「白くて、綺麗」
くすりと笑う清水時春は
なんだか妖艶で今の状況さえ忘れて見とれてしまう。
これは、夢でもCDでもなく
現実だ。
桜の花びらのように薄い綺麗な色の唇が自分の肌に近づく。
もうあと数センチ。
そのオーラに、光景に、吸い込まれてしまいそうだ。
って
いやいやいや、見とれている場合ではない。
「ちょっ、マジで無理ですから、やめましょ!!!!」
思いっきり足をあげたら
ごんっと鈍い音を立てて清水時春の腹部に命中してしまった。
いたっ、と小さく悲鳴を上げて
床に転げ落ちる清水時春は
暫くしてすぐにすやすやと寝息を立て始めた。
全く訳が分からない。
酔ってたの…か?
そういえばすごく楽しそうにお酒を次から次へと飲んでいたな。
憧れの人と座ってお酒を飲みながら話す機会なんて、もう一生訪れないだろうとおもっていたから
その場にいることだけで精一杯で、俺も対して酒には強くないのに飲み過ぎてしまったようだ。
ずっと好きだった清水時春と
偶然出会い、こうやってお酒まで飲めて話までできて
すごく
すごくうれしかったのに。
それなのに、俺は今、どうして震えているのだろうか。
全開になったシャツのボタンを留めようとするが指が震えて上手く留められない。
俺は、気がつくとあの日と同じようにジャケットを急いで羽織って深夜の街を駆け抜けていた。
タクシー拾って早く帰りたい。
胸がどくどくと音をたてる。
苦しい。息が上手くできない。
好きなCDを聴いているときの鼓動とは違う。
なんだよ、これ。
男に襲われて受け入れるなんて無理だ。
たとえそれが好きな人であっても。
「……キャパオーバーだよ……」
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