1 / 4
第1話
♠
「今日からここがお前の家だ」
そう言った、ぼくよりもずっと背が高い彼は、庭付きのとてつもなく大きな屋敷を顎で示した。
ぼくはアーヴィンド。
18歳。
いつも家の中でジッとしているから、身体は細く、色白。
これといって何の特徴もない黒い目に、黒い髪をした、身長150センチのチビ。
そして隣にいる彼の名前はリュシアン。
青みを帯びた黒髪に、ダークグレーの鋭い鷹のような目。
細身だけど、がっちりとした肩幅。
たぶん、年齢はぼくよりも12歳は年上なんじゃないかな。
ものすごく落ち着いているから、そう思う。
彼はこの街で、とてつもなく大きな屋敷を持つ大富豪として有名だ。
そして、無口で無愛想だということも......。
対するぼくは、とても貧しい生活を送っていた。
『今』という『今』までは、だけど......。
そんな立場が違いすぎる彼とぼくがなぜ、こうして一緒に住むことになったのかというと......。
ぼくの両親は小さい頃に亡くなり、ぼくは物心ついた頃から、路上でしがない絵を描いて生活していたんだ。
ぼくが描いた絵は、展示会で出展すると、いつも知らないうちに売れていて、そのお金でなんとか生計を立てていたんだけれど、風邪をこじらせて寝込んでしまって、絵が描けなくなったんだ。
ぼくが寝込んでいる間、借金が溜まりに溜まって、キャンバスや絵の具を買うお金すらも無くなってしまった頃。
借金の取り立てがやって来て、人買いに売られる寸前、彼が居合わせ、借金の肩代わりをしてくれた。
ともだちにシェアしよう!