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第2話

 助かったとは思うけれど、でも、実は全然嬉しくない。  ――というのも、彼はあまりにも無口で、無愛想だから。  彼は過去、人殺しまでしたっていう噂があるんだ。  ......正直、ものすごく怖い。  ぼく、殺されちゃうのかな......。  まあ、ね、ぼくって家族がいないから殺しやすいよね、うん。  そんな事を考えて、毎日をビクビクしながら過ごしていた、ある日――。 「明日から大切な用があって、この屋敷を留守にする。これは屋敷の鍵だ。この屋敷内どこでも好きに使うといい。だが、いいか? この小さな鍵の部屋にだけは入るな」  彼はよくよくそう言うと、ぼくに鍵束を渡した。 「これは、どこの鍵ですか?」  小指よりもひとまわり小さい鍵を見たぼくは、恐る恐る彼に問いかける。 「廊下の突き当たりにある、小さな部屋だ」  彼はそう言い残し、ぼくをひとり、広い屋敷に置いたまま、出て行ってしまった。  ――それから4日が過ぎた。  ぼくはいつものように、展覧会に出展する絵を描いて過ごしていた。  借金取りに売られそうになった時、彼には助けてもらったけれど、もともとは自分の借金だ。  お金はいつできるかわからないけれど、必ず返すつもりだ。  彼に言ったら、「いらない」って言われちゃったけど、でもこれは、男としての、ぼくのけじめだ。  ぼくだって、やらなきゃいけないことくらい知っている。  だから、そういう心づもりでいつものように絵を描いてた。  ......なんだけどね。  彼が家を出る直前に言った、『小さな部屋』のことがどうにも頭から離れない。

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