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第3話
小さな部屋って、いったい何があるんだろう。
『開けちゃいけない』
『入っちゃいけない』
そう言われると、気になって仕方がないんだ。
ちょっとだけなら......。
そしてとうとう、魔が差して、小さな部屋の鍵穴に鍵を挿し込んでしまった。
ドアを開けて、中に入った瞬間......。
ぼくは自分が見ている光景を信じることができなかった。
だって......。
だって、そこには――。
ぼくが今まで描いた絵が、たくさん飾られていたんだ。
気がつけばいつも売れていたぼくの絵。
口座にはきちんとお金が振り込まれていた......。
もしかして、もしかして......。
彼が、ぼくの絵を買ってくれていたの?
いつも怒っているような、怖い人だと思っていたのに......。
ずっと、ぼくを支えてくれていたの?
そう思うと、ぼくの目に、あたたかい涙がじんわりとたまる。
「ただいま」
低い声のその人は、もう知っている。
帰ってきたんだ!
そう実感すると、彼の顔を一刻も早く見たくて、ぼくは駆け足で、玄関ホールへと向かった。
「おかえりなさいっ」
......パフン。
興奮したあまり、勢いあまって彼の身体に体当たりするぼく。
すると、彼はよろけることなく、ぼくを受け止めてくれた。
それが嬉しくて、たくましい腰に腕を巻き付ける。
「どうして言ってくれなかったの? ぼくの絵をいつも買ってくれたの、貴方なんでしょう?」
「小さな部屋を開けたのか!?」
「......ごめんなさい」
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