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番外編②夏の思い出

 夏休み、思い出作りと称して海水浴へ訪れた。  二泊三日という小旅行。学生のうちに恋人ができたら絶対にやりたかった、と言っていた篠原。もし恋人ができていない場合、どうしていたのだろうかと考えたが、さすがに尋ねることはできなかった。  高校生でも許可をしているアルバイトでお金を貯めていた篠原は、旅行代を二人分出すと言い出したが、それを翔太は断った。  そこまでさせてしまうのは気が引けてしまうし、毎年もらっていたお年玉をこつこつ貯めていたお陰もあり、翔太はそこから自分の分の旅費を払ったのだ。 「うわあ……凄いですね! 人がたくさん!」 「ちょうど夏休みだから、みんな遊びに来るんだろうね」 「僕たちも早く荷物置いて海に行きましょう!」  ホテルではなく、小さな旅館へと宿泊しにきた二人。チェックインを済ませ、案内された部屋に荷物を置いた。必要最低限のものだけ別のバッグに入れて、旅館から海へと続いている道を辿って海へと向かう。海の家に併設されている更衣室で着替え、ロッカーに荷物を預けると二人は浜辺へと出た。  青い海と雲ひとつない青空が、際限なく広がっている。  浅い場所でも足首までくる海水が、程よく冷たくて気持ちいい。 「僕、芥さんと海に来れて嬉しいです」 「それは俺もだよ」 「それに、芥さんにとっては最後の夏休みだから、たくさん思い出作りしないとですね!」 「うん。ありがとう、翔太」  最後という言葉が寂しいわけではないが、別にこれで終わりというわけでもない。高校生活での夏休みが最後なわけであり、二人の関係が最後というわけではないのだ。  わかってはいても、寂しい気持ちになってしまう。  表情に出さなくても、自分の言ったことに気持ちが沈んでしまったであろう翔太を見かねて、篠原が手を握ってきた。 「あっ、か、芥さん、手!」 「大丈夫。こんなに人がいるんだ。俺たちのこと、誰も見てないよ」 「ううっ」  日頃、慣れているとはいえど、やはり恥ずかしいものはある。  でも、本当は嬉しい。こうして、違う場所でも手を繋ぐことができる。  手を繋いだまま、深い場所まで海水に身体を沈めていく。ひんやりと気持ちのいい海水が、身体全体に染みわたっていった。 「ねえ、翔太。あの洞窟まで泳いでいかない? ほら、見える?」 「あ、見えます。あの洞窟ですね! 行ってみましょう」  遠くもなければ、かといって近くもない場所に洞窟はあった。  ただ、肉眼で見える距離でもあるし、海水浴するには危険区域ではなかったので行ってみても大丈夫なのだろう。  その洞窟まで二人で泳ぎ、恐る恐る中へ踏み入れた。海水も浅く、洞窟の中で歩くこともできるだろうが奥のほうは暗く、どこまで続いているのかわからない。 「声が響く……」 「すごいな……ほら、上も高い」 「うわあ……高いです……」  二人の声が洞窟の中で響き渡る。他の人の声がしないということは、翔太と篠原、二人きりということでいいのだろうか。  少しだけ歩いてみたが、どうやらそのようだ。 「翔太」 「はい、芥さ――……ぅん!」  背後から抱き寄せられ、顎をくいっと篠原を仰ぎ見るように持ち上げられる。それを見計らって篠原に唇を塞がれた。離れてはくっつけてと、啄むようなキスを何度も交わし、熱い舌がねじ込まれてからは何度も口内で舌を絡められた。  抱きしめられている腕にしがみつきながら、内腿が震える。 「んぅ、ちゅ……っ、は……」  膝が崩れそうだと思った瞬間、唇が名残惜しそうに離れた。 「ここ、すごく穴場なんだけど、こんな場所で翔太に触れたら、可愛い声が響いて誰かに聞かれそうだから我慢するよ」 「な、な、なにを……! 芥さんのばかっ! えっち!」 「ひどいな~翔太。そんなことを言う翔太には、旅館に戻ったら朝まで寝かせないつもりだから、覚悟しておくように」  先生みたいな口ぶりで警告してくる篠原に、翔太は顔を真っ赤にさせた。  寝かせない、と想像しただけでも沸騰する。 「さて、と。浜辺に戻ろうか」 「は、い……」  頭の中で篠原の言葉が何度も反芻され、旅館に戻ってからのことばかりを考えてしまった。 (僕、なにを期待して……)  翔太から篠原に「えっち」と言ったが、自分のほうが相当えっちなのではないだろうかと、改めて恥ずかしくなってきた。  そんな動揺して体温が上がっている身体に、海水はとても気持ちよかった。  浜辺に戻り、飲み物を買いたいからと、海の家へと向かった。  篠原から「一緒に買うから場所取りお願い」とお願いされたので、翔太は二人分が座れる席はあるだろうかと室内を見渡した。かろうじて、空いた席を確保して篠原が帰ってくるのを待った。荷物はロッカーに預けているため、財布を取りに行ってから買うまで多少時間はかかるだろう。あとでお金を出すと言えば、これくらいは奢らせて、と頭を撫でられた。  早く戻ってこないかなと、翔太はそわそわ待ち続ける。 「――なあ、君ひとり?」 「え?」  急に声をかけられて顔をあげた。  声からして篠原ではないことに気づいたが、どうして声をかけられたのか翔太はわからなかった。  そもそも、見るからに翔太は女性ではなく男性だ。  ナンパにしろおかしい。 「ねえ、ひとりだよね? 暇なら俺らと一緒に遊ぼうぜ」 「え、あ、いえ……ひ、ひとりじゃないので! ちゃんと連れがいますからっ」 「そんなこと言っちゃってさ~。本当はひとりなんだろ?」  勝手に決めつけて、言い寄ってくる二人の大人の男性。  ひとりは、普段からスポーツをやっていると言わんばかりのがっしりとした体躯に、もうひとりは日焼けしていない白い肌に顔立ちが綺麗な男性。  何度も「ひとりではない」「連れがいる」と抵抗しても、二人はなかなか引いてくれなかった。 「君、どこにでもいそうな顔立ちしてるけど、困った表情可愛いね。……ああ、泣かせてあげたいな」 「や、あ、あのっ」 「おい、怖がってるだろ。男が趣味だからって、あんま怖がらせるなよ」 「やー、ついな」  本能的に、やばいと警告音が鳴る。  この場から離れて、篠原の場所へ行きたい。それなのに、怖くて身動きが取れないでいた。 「ほら、ひとりだと危ないだろ?」 「ぼ、ぼくっ……!」  これ以上どうすればいいのか困惑していると、視界の端で篠原が翔太を探している姿が入った。  手を振れば翔太のいる場所がわかるというのに、そんな翔太の視界を二人の男性が遮ってきた。 「何度も言いたくないけどさー、ひとりだとつまらないだろ? 俺たちと遊んだほうが絶対に楽しいって。色々と教えてやるぜ、ほら……」 「っや……! か、かい、さんっ……!」 「なに泣かそうとしてんのさ。怖がってるだろ」 「泣かせたいって言ったの誰だよ。それに、こういうのは積極的にいかないとな……って、うわっ……!」  目の前にいたスポーツ系の男性は驚いた声をあげ、後ろへと引っ張られるように倒れた。倒れた後ろにいたのは篠原で、ようやく翔太は安心して涙ぐんだ。 「翔太になにをしようとしてた」 「あー……ただ、声をかけていただけだよ」 「声? 翔太、泣きそうな顔してるじゃないか! ……お前ら、俺が本気にならないうちに消えろ」  二人を睨みつけるように低い声で言葉を投げつけると、声をかけてきた二人はそそくさと逃げるように離れていった。 「翔太、遅くなってごめんね。大丈夫?」 「だ、大丈夫……です……」  柔らかく、優しい声で名前を呼ばれ、翔太は身体の力が抜けた。  知らない二人の男に声をかけられ、意味のわからない押し問答が繰り広げられ、翔太は自然と肩に力が入っていた。  篠原はテーブルに飲み物を置くと、力の抜けた翔太の身体を優しく抱きしめた。周囲に見られたって構わない。 「ごめん。もっと早く戻ってくれば、こんなことにならなかったのに」 「そ、そんな! それでも、僕のところに戻ってきてくれたじゃないですか。芥さん、助けてくれてありがとうございます」  ぎゅっ、と背中に回している腕に力を入れて、身体全体で「ありがとう」と伝える。伝わってくる肌の温もりが、更に翔太を安心させた。 「翔太は自覚ないだろうけど、俺から見ても可愛すぎるくらいだから」 「僕、言われるほど可愛くないと思いますけど……でも、芥さんにそう言われると嬉しい……です……」  照れくさくなり、語尾が尻すぼんでいった。  篠原に、「これだから可愛いんだよ」と言われ、抱きしめている身体を離し、翔太の額を軽くこつんと指ではじいた。  そして、額と額を合わせて見つめ合うと、ここが海の家だというのもすっかり忘れ、誰に見られているかもわからないというのに、攫うように唇を奪っていった。  あれから、再び海に入って泳いだり、ボートを借りて二人乗りしたり、海の家であった嫌なことを忘れるくらい楽しい時間を過ごした。  旅館に戻ってきたのは、夕日が沈む前だ。  旅館の料理も楽しみだが、なにより普段入ることのない露天風呂。  それが一番の楽しみだったりする。  この旅館の露天風呂は、海を見ながら露天風呂が楽しめると評判だ。 「色々あったけど、楽しかったね」 「はい!」  部屋に戻り、露天風呂に入る準備をして、まずは大浴場へと向かった。露天風呂は、その大浴場を抜けた外にある。  大浴場でお互いの背中を流し合いしてから、外にある露天風呂へと向かう。まだ誰もいない露天風呂は、二人きりの貸切状態だ。  露天風呂は乳白色の濁り湯、肌にも優しい弱酸性なので女性でも入りやすい温泉である。効果も様々で、この旅館に足を運ぶ人が年間を通じて多いという。  そんな露天風呂を、好きな人と堪能できるのだ。  髪の毛を伝って滴る雫が、水面に小さく波紋を作る。 「また、来年も行きたいね」 「はい。僕も、また行きたいです」 「夏じゃなくても、行きたいなと思ったときでもいいし。もちろん、そのときは翔太と一緒に」 「僕以外だと誰と一緒に行くんですか?」 「わかってるくせに。……そういう意地悪、翔太も言うようになったね」 「い、意地悪じゃないですっ」  くすくすと笑い合い、視線を外へ向ける。  完全に夕日は沈んでおり、昼間あんなに青空だったのが綺麗な夜空へと変化していた。 「景色もいいですね。星が綺麗……どれが、一番星なのかなあ……」 「どれだろうね」 「海から見ても綺麗だと思うんですけど、露天風呂から見るとより特別なように思えて、どの星たちも輝いて見えます」 「……でも、俺の中で一番綺麗なのは翔太かな」  恥ずかしいことをさらりと言いのける篠原に、翔太は顔を真っ赤にさせた。肩を抱き寄せられ、耳元で息を吹きかけられて身体が跳ねた。 「ひっ……!」 「はは、可愛い反応」 「ちょ、あっ、も……か、い、さんっ……」 「大丈夫。誰もいないし、俺たち二人きり」  ただでさえ脳内がパンク寸前なのに、耳元で囁かれてしまえば言葉すら神経も刺激してくる。  最後までしないから、と言って篠原は空いている手で翔太の性器を包み込んできた。軽く扱いただけで、ひくんと硬度を増して勃起していくのがわかる。  好きな人の手で、篠原の手で感じてしまっていることに喜びを感じ、それが素直に性器にへと直結する。鈴口からとぷ、と先走りが零れたような感覚がした。 (あ、……お湯の中に……)  汚してしまいごめんなさいと、罪悪感な気持ちがあっても、与えられる快楽にどうしても翔太は気を取られてしまう。  扱かれながら、耳を食むられる。耳から流れ込む水音、熱い篠原の吐息に頭がくらくらしてきた。 「あっ、あ、……かい、さんっ」 「露天風呂で乱れてる姿、可愛い。本当はこのまま最後までしたいけど……ざーんねん」 「ひぅ、あっ、ああ、……つ、よくしちゃ、ッ……ぁ、もっ、ぅんん!」  このままだと、お湯の中で絶頂を迎えてしまう。  流石にそれだけはまずいと思い、翔太は篠原を制しようと身動きを取ろうとするも、与えられる快楽にそんな力は残っておらず、もうなすがまま。  しかし、もうやばいと思ったところで、篠原が翔太の身体を抱きかかえた。露天風呂の縁に篠原が座り、その篠原を跨がせ翔太を座らせた。 「あ……えっ……?」 「流石に俺も我慢の限界ってものがありまして。可愛い翔太を見て勃たないわけがないだろ? だから、一緒にイこっか。これ以上はお湯を汚すわけにも申し訳ないしね」 「っ、そうしたのは芥さんでしょ! ん、あっ」 「はいはーい」  なにが「はいはい」だと、心の中で悪態をつく翔太。篠原は二人分の性器を握って、緩々と扱きはじめた。  貸切ではないため、いつ誰が来てもおかしくない状況。それなのに、翔太の口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れる。ここが外ではなく、大浴場や内風呂であれば音が響き、聴覚まで刺激されること間違いないだろう。 「あっ、あっ、かい、さんの、あつ……っ」 「翔太とこうやって、一緒に扱いてると気持ちいいよ」 「ぅんん、ぼくも、ですっ……っひ、ぅ……あ、ぁあっ」  顔を寄せてくる篠原に、翔太も顔を寄せて唇を重ねる。  すぐに舌が侵入して、ねっとりと絡め取られていく。何度も舌を絡め、唾液を交換し合い、混ざり合った唾液が口端から零れていった。舌先から感じるのも快楽へと変わり、翔太はなんでも与えてくれる篠原に、一生懸命についていった。 「ん、はっ……か、い、さんっ……あ、ああっ、んぁ」 「翔太、顔真っ赤。……美味しそう。食べごろだし、余すとこなく食べちゃいたいくらいだ」 「っ、ひぅ!」  強く握りこまれて、先端をぐりゅと刺激される。 「翔太がのぼせるといけないから、早くしよっか」 「あ、ああっ、かい、かいさんっ……は、やいッ……んぁ、んんっ」 「続きは食事が終わってから。……本気で朝まで寝かせないつもりだから」 「え、あぅ、ちょ……あんっ、ああ、あっ、あ、あ、んぁああ――――っ、っ……」  強い刺激に、篠原へ思いきりしがみついた。絶頂を迎えるとき、篠原が気を利かせて咄嗟にタオルで二人分の性器を包み込み、その中で二人分の白濁を迸らせた。  旅館の料理はどれも美味しく、火照った身体のあとにしてはとても味わえた。どれも満足できる一品ばかりだ。  美味しくて夢中になっている翔太を見て、篠原は微笑んだ。 「……なに笑ってるんですか、もうっ」 「ん~……食べてる姿も可愛いなって」 「……っ!」 「あとで食べられる側になるんだけどね」 「ちょっ……!」  なに、さらりと恥ずかしいことを言ってくれるのだろうか。 「急いで取って食いやしないよ」 「あ、当たり前です!」 「ふーん。じゃあ、食べられる覚悟はあるんだ」 「~~~~っ」 「ほらほら、あとでデザートも運ばれるんだ。楽しみだね」 「そ、そうですね!」  恥ずかしくなり、思わず語気が強くなってしまった。  からかってくる篠原に、翔太の心は乱されっぱなしだ。  デザートは食事が終わったタイミングで運ばれてきて、それも食べ終わった二人は仲居が後片づけや布団を敷いてくれる姿を、窓際にある席でお茶を飲みながら見ていた。 「ごゆっくり」と言う仲居に、「ありがとうございました」とお礼を言ってひと息ついた。  このあとは、宣言通り篠原に抱き潰されてしまうのだろう。  想像するだけで身体が熱を持ち、緊張が高まってくる。  それが伝わってしまったのか、篠原に笑われた。 「そんな緊張することないのに」 「うう……で、でもっ」 「はい、翔太。バンザイして」 「……え?」  言われた通りにバンザイをすれば、翔太の身体を篠原が抱きかかえた。重たいはずなのに軽々と抱えられ、布団の上へと下ろされる。前髪をさらりと梳かれると、現れた額にキスをされ、そのまま後ろへと押し倒された。  篠原は、仰向けになった翔太に覆いかぶさった。  これから起こる出来事がなにかとわかっていても、胸がどきどきと高鳴り、張り裂けそうだ。 「怖がらなくていいから。気持ちよく、とろとろに抱いてあげる」 「……っ」  そうは言っても、篠原の笑みがなんだか悪魔のように見える。  背中から黒い羽と、下半身にはないはずの尻尾が妄想と幻覚で見えているような気がした。 「ん、ちゅ……はぅ、ん」  性急に唇を塞がれ、舌が口内へと侵入してくる。奥へ引っ込もうとしている翔太の舌を、篠原が強く絡め取ってきた。くちゅ、と唾液が交わり、卑猥な音を奏でていく。 「ぅん、ぁ……かい、さんっ……んぁ、ちゅ……」  角度が変わる度に、翔太は篠原の名前を呼んだ。  だがそれは、すぐに篠原の唇によって吸い込まれる。  交じり合う唾液が翔太の口端から零れ、そのまま顎を伝っていく。どのくらい口内を堪能されたのか、唇が離れる頃には軽く腫れてしまっているのではないだろうかと思ったほどだ。  二人の間に銀の糸が引き、その唾液の糸を辿るように篠原が追う。唇を掠めるキスだけをすれば、そのまま唇を首筋へと流れるように移動させた。首筋のラインをなぞるように、唇で優しく愛撫していく。  途中、ちくっとする小さな痛みに、上ずった声があがった。 「この印は、俺のっていう証」 「ん……嬉しいです。僕も、芥さんにつけたい」 「翔太はあとでな。翔太を早く堪能したくて我慢できないんだ」 「……っ」 「翔太、好きだよ」  浴衣の合わせ部分を広げ、露わにした胸の突起を指で摘ままれた。まだ、ふにゃりと柔らかい突起は、指先で捏ねることにより芯を持って硬くなっていく。両方とも突起を捏ねたり摘まんだりと繰り返していると、美味しそうな姿へと変化した。  そこを、篠原は顔を近づけさせて片方の突起を舌で舐め上げた。  ねっとりした唾液が絡みつき、突起部分がテラテラと唾液で濡れて宝石のように光って見える。ひと舐めする度に、ぞくぞくと腰がうずき、翔太は自然と身体をびくびくと跳ねさせた。 「んぁ、っ……」  舌で愛撫された片方の突起は赤く熟れており、果実のように食べごろの状態。翔太の反応がいちいち可愛くて仕方がないのか、容赦なく篠原は責め立てた。  ある程度、片方の突起を舌で堪能したあと、もう片方の突起も忘れずに今度は唇を使って吸い上げた。舌で舐められるのとは違い、吸われるとまた違う快感が生まれてくる。  吸い上げながら、時折舌でちろちろと弄ばれ、翔太は己の性器から先走りが零れていくのがわかった。恥ずかしくて、両脚をもじもじさせていると、それに気づいた篠原が胸から顔をあげて微笑んだ。 「……こっちも食べごろだったり?」 「……っ!」  親父くさい言い方――だなんて、篠原相手に言うことはできない。今言えば、容赦なく責められて、明日の朝は完全に足腰立たなくなるのが目に見えている。  現に、朝まで寝かせないと宣言させられているのに、これ以上どうなってしまうのか。  帯はまだ解かず、浴衣の下から手を入れて下半身に触れられた。  愛撫されてきた影響で、すでに勃起している性器からは先走りが零れ、その先走りは下着に染みを作っていた。指先が触れただけで、濡れている面がぬちゃ、と小さく音を立てる。 「そんなに、気持ちよかったんだ……」 「や、っ」 「下着、気持ち悪いでしょ? ほら、腰浮かせて」  浴衣の中から下着を抜き取り、翔太が身に着けているものは裸に浴衣のみ。帯を解いていなくとも、乱れている姿は篠原を更に興奮させる要因となるだけ。  取り払った下着をその辺に放り投げ、ふるりと震えている性器を握り、ゆっくり、優しく扱いていった。鈴口から更に先走りが滲み出て、滴り落ちていく。  薄暗い室内で、くちゅ、くちゅ、と淫猥な音が奏でられる。 「あーあ、俺の手、こんなに汚してさ……翔太、気持ちいい?」 「ん、ああっ、あ、っ、あっ」 「ね、気持ちいい? よくない?」 「ひぅ、あ、ああっ、き、もち、いいっ……!」  少し強めに握られ、翔太は喘ぐ。  下半身を責められながら、先程まで愛撫されていた胸の突起を愛撫され、二重の責めに翔太は身体を快感で震わせた。 「ああっ! や、あっ、あ、あっ……っん!」 「嫌、じゃないでしょ。身体はこんなにも正直なのに」 「んんっ、あっ、ひぅ、あっ……は、っ」  胸を愛撫され、身体中にキスの雨を降らせながら肌を滑っていく篠原の顔。少しずつ下半身へと近づくと、なんの躊躇いもなく翔太の性器を根本から舐めあげた。 「ひんっ!」 「っ、はぁ……」 「あ、やだっ……やあ、かい、さんっ……!」 「大丈夫。大丈夫、怖くないよ。気持ちいいことに身を委ねて」 「ひぅ、あっ、あっ」  根元から裏筋、亀頭部分まで舌が這い、鈴口に舌先が辿りついたときにはぐりぐりと刺激を与えられ蜜を溢れさせていた。軽く吸いあげれば、翔太の腰はびくびくと震える。  舐めるならまだしも、篠原は翔太の性器を口に咥えたのだ。  優しく陰嚢を揉み上げながら、口を窄めて歯を当てないように優しく、ときには激しく上下していく。 「ん、ああっ、あぅ! ひ、あっ……あっ、あっ」 「んー、ひもひいい?」 「あ、やっ……しゃべ、っちゃ……っ」  咥えたまま喋られると、その振動も快感へと変わる。  ちょっとしたことでさえも、翔太にとっては快感へ繋がるのだ。 「ん、はっ……ちゅ、っ……」 「あ、あっ……ひ、んぁ、っ、かい、さぁあ……っ」  与えられる刺激が翔太にとっては強すぎて、そろそろ限界なのか内腿が小刻みに痙攣しはじめた。 「ああっ、あっ、も、やあ……!」 「ちゅ、はぁ……イく? もう、イっちゃう?」 「ん、んっ」  性器から口を離し、翔太の顔を覗きこんで確認してくる。  イくなら俺の口に、と言って、再度性器を咥えて、追い立てるように責められた。鈴口を強く吸われ、舌先でぐりっと抉るように刺激を与えられると、翔太は呆気なく篠原の口の中で熱を迸らせた。 「あっ、ひ、ぁああ、ッ……――――!」  背中を弓なりに撓らせ、篠原の口内で果てた翔太は、息も絶え絶えになりながら放心した状態で天井を見つめていた。  ぜー、はー、と何度も息を繰り返しながら、ゆっくりと呼吸を整えていく。 「翔太」 「ッ……は、かい、さん……あッ! か、かいさんっ、吐き出して!」 「慌てすぎ。それにもう遅いよ。翔太の、飲んじゃったからね」 「っ……なんてことしてるんですかっ」  汚いものなのに、とぶつぶつ小さい声で言えば、篠原が「翔太のものは汚くないよ」とフォローしてきた。 「うえっ……もう、芥さんっ……」 「好きな人のものなら、魔法がかかってるのかな。不味いって感じもしないし、汚くも感じない」  どれだけ人がいいのか。  優しく宥めてくれる篠原に、普段は自分からしないキスを翔太から仕掛けた。 「んっ……しょーた」 「かいさんっ、かい、さんっ……んぁ……ちゅ……」 「……っ、は……」  翔太の吐き出したものを自分自身でも味わうとは思わなかったが、篠原と二人で分け合っているようで不快を感じることはなかった。  キスをして、ギュッと強く抱きしめ合う。しっとりと汗ばんでいる二人の肌が密着し、いつも以上に温もりを感じ取ることができる。  気持ちが昂り、興奮してくる。  珍しい翔太からのくちづけに、今度は篠原が熱いキスを仕掛けた。 「んふっ、あっ、ふ、あっ、かい、さ、……も、ぼくっ……」 「っ、は……なに? 次はどうしてほしい?」 「あっ……」  そんなことを言いながら、篠原は翔太の身体を四つん這いにさせた。窄まっている後孔を傷つけないようにゆっくり解されるも、翔太の身体はすでに篠原を求めており、早く胎に受け入れたい気持ちでいっぱいだった。  それなのに、篠原は意地悪だ。  後孔に熱い息を吹きかけながら、勃ちあがっている性器を緩く扱いてくる。とぷ、と溢れてくる蜜が鈴口から垂れ落ち、シーツに染みを作っていった。  ――早く、挿れてほしい……。  どくどくと早鐘する心音。興奮して、今にもどうにかなりそうな身体。 「っ、ひ……あ、ああ、やっ……も、かい、さんっ……!」 「んー?」 「かい、さんっ……かい……さんが、ほしっ……!」 「っ……はー……翔太、可愛すぎっ!」  言い終わるのと同時に、ひくつく後孔に篠原の性器が当たり、一気に熱が侵入してきた。 「ん、ぁあああッ……は、あっ」 「……っく」  硬くて、熱い杭が全身を引き裂くように、襞を掻き分けて奥へ奥へと侵入してくる。 「か、はっ……んぁ、あっ!」 「ッ、翔太……なか、あっつい……、気持ちいーよ」 「ひっ、ん! あ、ああっ……あ、あっ、ぼく、もっ……!」  容赦なく、奥まで激しく抽挿を繰り返し責め立ててくる。  一番張っている部分が前立腺を何度も擦る度、抉られるような強い刺激に目の前がチカチカと火花が散る。  腰をがっちり掴まれ、肌がぶつかるほど穿つ篠原に翔太は嬉しさと共に強烈な快楽に身を震わせた。強く求めてくれることが嬉しくて、自然と鈴口からも悦びの蜜がしとどに零れていく。 「今日は、いやっていうほど、抱き合おう」 「っ、ひ、ああっ、んあ、あ、あっ」 「好きだよ、翔太」 「あ、やっ……ま、って……だ、め、だめぇ、ッ……!」 「イく? 俺、前も触ってないのにイっちゃう? ね、しょーた」 「や、ああっ……! こわ、こわいっ……あ、やだっ、やっ!」 「大丈夫。怖くない。最高に気持ちのいいことだから……好き。好きだ、翔太」  愛の言葉を囁かれただけで、全身がぶわりと得体の知らない感情が駆け巡り、触れてもいないのに性器が爆発しそうで怖くてシーツを手繰り寄せる。  だが、力のない手はうまくシーツをかき寄せることもできず、しがみつくものがない。  せっかく、篠原から「好き」と言ってくれたので、翔太からも言葉をあげようと思っても快楽が勝り、うまく伝えることはできなかった。 「俺はここにいる。翔太の可愛い姿、全部見せて」 「ッ、かい、さ……かい、さん……ぃ、や、あ、ぁああ、ん、あッ――――ッ!」  ばちゅん、と強く最奥まで押しつけるように挿入され、翔太は身体を震わせながら吐精した。それと同時に、胎が篠原の性器を締めつけ、翔太の中にそのまま熱を叩きつけたのだ。挿入している性器を抜けば、そのまま翔太の身体は力尽きるように弛緩して、シーツの波に横たわった。  そんな翔太を仰向けにして、覆い被さり抱きしめる。  耳元で「まだまだこれからだよ」と、悪魔の囁きが襲ったのは言うまでもない。  朝まであと何時間あるんだろう――と僅かな理性で思いながら、翔太はまだ与えられる快楽と、篠原からの愛に幸せを噛みしめた。  翌日、翔太と篠原は太陽が真南にくるころに目を覚ました。  先に目を覚ました翔太は、視界に篠原の胸板が入り、昨晩のことを嫌でも思い出してしまい恥ずかしく顔を熱くさせた。  だが、とても幸せを感じた時間でもあった。 「……芥さんって、寝てるときの表情少し幼い……」  目線を移動させて、篠原の寝顔を見つめる。  起きているときとは違い、寝顔はまだあどけない部分もあり、子供みたいで可愛いなと感じた。寝顔を見るのはこれがはじめてというわけではないが、何度見ても可愛いと思ってしまう。 「――こーら。人の寝顔見て、なに幸せそうな顔してんの?」 「ふふ。おはようございます、芥さん」 「おはよう、翔太。……身体、大丈夫じゃないよね。声ガラガラ」  耳が垂れてしゅんとしている犬のように、篠原は困ったような笑みを浮かべる。だが、そんな篠原を、翔太は照れくさそうに微笑み「愛の痛みなので大丈夫ですよ」とフォローした。――とはいえ、あれだけ抱かれれば身体は怠く、痛みはないが足腰が鈍く感じる。  それに、声は風邪を引いたかのように枯れている。  けれども、それは全て篠原との高校生活最後の思い出と考えると全く苦でもない。翔太自身も、篠原と愛を深め合うことができて、それはとても忘れられない思い出となった。  今までにないくらいの快楽をたくさん味わった。 「こうなりそうだから、二泊にしておいて正解だったね。今日は、二人でゆっくりのんびり過ごそう」 「はい!」 「海以外にも温泉街もあるし、美味しい飲食店や土産屋もあるから体調よかったら夕方からでも行こう。早めに言えば、夕飯は外で食べることが可能だから」 「それじゃあ……早く回復するために、僕と一緒にごろごろしてください」 「あ~……可愛いこと言うんだから……」 「あ、別にそういう意味で言ったわけじゃないですからね! いくらなんでも僕の身体死んじゃいます!」 「俺にはそう見えたんだけどな~」 「もう!」  くすくすとと二人で微笑み合いながら、自然とくちづけを交わす。  まだまだ二人の時間は続く。  こうして、好きな人と一緒の時間を過ごせることは幸せだなと感じながら、翔太は篠原に抱きしめられながら再び目を閉じた。  終わり

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