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第6話

 - - - 港南工業高校。 俺が進学した高校は、大きな川を越えた先にあって、駅からバスを乗り換える時間がもったいない俺は、ほとんど友人と歩いて通った。 途中の土手に、きれいな彼岸花の群生場所があって、俺はこの道を歩くのが好きだった。 彼岸花は、墓場に咲く花のイメージがあって、好きではないと忌み嫌う友人もいる。 葉もなく、まっすぐ伸びた茎の先には、炎をたぎらせた様に深紅の花が咲き誇る。 線香花火を逆さにしたようにも思えて俺は好きだったが、あえて人に言う必要もないから黙っていた。 「夏休みが終わると一ヶ月って早いよな~。もうすぐ中間試験だよ。勉強してる?」 同級生の柴田に聞かれて「まさか。」と一言。 「だよな~、小金井が勉強してる姿なんて想像できないや。」 「ひでぇな、俺だって一夜漬けぐらいはするっての!留年するとかカッコ悪いじゃん。」 「まぁな!いくら男子校だって、留年は後輩の手前カッコ悪い。ビリでもしがみ付いて進級しなきゃ。」 ハハハハ・・・・ 学校までの道をこうやってしゃべりながら歩くのも、2年目で慣れた。 結局俺は、女子に色々気を使うのが嫌で男子校に進学した。 桂との事は、俺の記憶の片隅に追いやって、目と鼻の先に住んでいるアイツの顔を見る事もない。 桂は、私学の進学校へ進んだ。 大学まである学校で、かなり勉強には力を入れているらしい。 完全に、俺とは住む世界が違う。 たまに、同じ中学だったヤツらと出会うと、必ず桂の話が出た。 俺以外にも、桂に勉強をみてもらった生徒は多くて、試験が近づくと何故か桂の事が話題に上るんだ。 「なんか、桂の高校って一年先の勉強をやってるらしいよ。この間コンビニでたまたま出会ってさぁ、そう言ってた。」 同じ中学だった長谷川が俺の席の前で言う。 俺は「へぇ。」と言っただけで........。 「そういえば、千早の事聞かれたっけ。元気にしてるかって・・・・。なに、お前ら家近いのに、全く顔合わせてないんだって?」 長谷川に言われて、俺は少しドキッとする。 桂が俺の事を気にしてたって? そんなのアイツのポーズだろ。 いつも余裕のある素振りで・・・・・。 「そういえば、桂の彼女って藤ヶ谷女学院の一年生だってさ。いいよな~~~~!頭はいいし、そこそこカッコよくなってたしさ!くっそ~~~っ・・・・悔しい!!」 ひとり叫びまくる長谷川をよそに、俺の心臓はぎゅんって掴まれた様に痛んだ。 - 何?・・・・・この痛み・・・・・。 「あ、そうそう、試験勉強教えてって頼んどいたから。来週の映画の予定はそっくりそのまま勉強に変更な!・・・桂の家に3時に集合だから。」 「・・・・・・・へ?」 長谷川の顔を見直して、文句を言おうとしたらチャイムが鳴った。 慌てて自分の教室へと戻っていく姿を見ながら、しばし呆然とする俺。 ・・・・・なんなの?今更、桂に合うとか・・・・・・・・ 俺の心臓は、焦りを伴いながら痛み出した。

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